『リスクを考える』吉川肇子著(ちくま新書)

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リスクを考える

『リスクを考える』

著者
吉川 肇子 [著]
出版社
筑摩書房
ジャンル
哲学・宗教・心理学/心理(学)
ISBN
9784480074898
発売日
2022/06/09
価格
946円(税込)

書籍情報:openBD

『リスクを考える』吉川肇子著(ちくま新書)

[レビュアー] 西成活裕(数理物理学者・東京大教授)

 病気、事故や災害など、私たちの身の回りにはリスクがたくさんある。こうしたリスクとの向き合い方について、一般の人の目線で考えていくのが本書である。

 まず、危険とリスクは異なる事に注意したい。危険とは望ましくない事を表す言葉だが、それが起こる確率については含意していない。リスクとは、その危険の重大さと、それが起こる確率との掛け算で定義される。しかしコロナ感染症の初期段階では、十分なデータが無いため死亡率は正確に分からない。また、大地震のように発生確率が極めて小さい場合、重大な危険でもリスクとしては小さくなる事もある。つまり、専門家任せのリスク計算では、一般の人の感覚とズレる可能性があるのだ。そこで皆が参加して一緒にリスクを決めるべき、というのが本書で述べられているリスクコミュニケーションである。

 これは、悪いことは伝えない文化があると上手(うま)くいかず、情報の公開と透明化、そして一方的な説得ではない対等な合意形成が鍵となる。こうした取り組みは日本ではあまり進んでいないが、災害大国として今後重要さを増してくるだろう。

読売新聞
2022年8月5日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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