『ただ、一緒に生きている』坂本美雨著(光文社)

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ただ、一緒に生きている

『ただ、一緒に生きている』

著者
坂本美雨 [著]
出版社
光文社
ジャンル
文学/日本文学、評論、随筆、その他
ISBN
9784334953126
発売日
2022/06/22
価格
1,760円(税込)

書籍情報:openBD

『ただ、一緒に生きている』坂本美雨著(光文社)

[レビュアー] 梅内美華子(歌人)

 本を開くと写真から始まる。妊娠中の丸く突き出たお腹(なか)。赤ちゃんに寄り添う愛猫「サバ美」。おんぶしたままラーメンを啜(すす)る若いママ。七五三のお化粧。家族、親戚、友だち。成長とともに表情が加わる子供にぼかしは入っていない。どこかを隠すと不自然で歪(いびつ)だ。顔出し、と考えてしまった自分が恥ずかしくなる。ありのままの姿がおかしくも愛(いと)おしい日常と、疑いようのない愛を伝えてくる。

 ミュージシャン坂本美雨が子育ての日々を綴(つづ)ったエッセイ集。母親が子供と一緒に成長するというのはよく言われることだが、彼女は自分自身に向き合い「子どもに許されて生きている」と感じ、子とともに「この世界を見てみたい」と歌詞に綴る。そこに実感と彼女の歌声のようなやわらかさがあふれている。生きていることを噛(か)みしめるような正直な文章に、子育ての経験がない私も何度も笑い、何度も目頭が熱くなった。

 書き下ろしエッセイに父の坂本龍一、母の矢野顕子、兄への思いと生い立ちが初めて語られる。彼女もまたやさしくナチュラルな距離感で親を愛し、許している。

読売新聞
2022年8月5日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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