筋トレや家事をしながら効率的に学べる「耳読書」のすごい効能

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超効率耳勉強法

『超効率耳勉強法』

著者
上田渉 [著]
出版社
ディスカヴァー・トゥエンティワン
ISBN
9784799328590
発売日
2022/07/22
価格
1,760円(税込)

筋トレや家事をしながら効率的に学べる「耳読書」のすごい効能

[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)

超効率耳勉強法』(上田渉 著、ディスカヴァー・トゥエンティワン)の著者は、日本にオーディオブックを聴く文化を広げるべく、大学在学中にために株式会社オトバンクを創業した人物。現在では、日本最大のオーディオブックプラットフォームaudiobook.jpを運営するに至っているのだそうです。

そうしたバックグラウンドに基づく本書は、2009年に出版された『脳が良くなる耳勉強法』(同)を改訂したもの。日本で音声コンテンツ市場が拡大するなか、改めて時代に見合った勉強法を送り出すことにしたということのようです。

ところで、「耳勉強法」とは具体的にどういったものなのでしょうか?

耳勉強法とは、文字通り、耳を使った勉強法です。耳から本の朗読や講義、講演、対談といったオーディオブックを聴き、聴覚を存分に活用して学ぶ、非常にシンプルな勉強法です。これまでは一般社会での認知度は低かったものの、成功者といわれる人たちの多くが共通して行ってきた、知る人ぞ知る“秘密のメソッド”でもあります。(「はじめに」より)

そんな耳勉強法は、国内外で広く認知されてはいるものの、それでもまだまだ実践していない方が多い勉強法であるといいます。しかし、その実践のための環境が整ったいまだからこそ、より多くの人々にその魅力や効能を伝えたいーー。本書には、そのような意図が込められているわけです。

そんな耳勉強法を実践すれば、ライフスタイルが大きく変わると著者は主張しています。はたしてなにが変わるのか、第4章「耳読書・耳勉強が変えるライフスタイル」に注目してみることにしましょう。

教養をつけたい人に最適

オーディオブックは、教養をつけたいと思っている人に最適。実際に、「本を読むより勉強しやすい」「知識が増えたという実感がある」という声が多いのだそうです。

ヘビーユーザーである著者の感覚としても、オーディオブックにはユヴァル・ノア・ハラリ著(翻訳:柴田裕之)『サピエンス全史』上下巻(河出書房新社)などノンフィクション系の教養本や、呉座勇一著『陰謀の日本中世史』(角川新書)といった教養新書は、とりわけ耳勉強に向いているのだとか。

ただ、そういった書籍はたいていページ数が多いため、分厚い現物を目にすると読むことを躊躇してしまいがちでもあるでしょう。

しかし、オーディオブックによる読書であれば、実際に本を読むよりも、心理的負担も軽く済みます。興味のある人ならきっと最後まで読みきれる(聴ききれる)はずです。(107ページより)

一方、同じ“学び”であっても生活に役立つ情報やノウハウなどが学べる実用書の場合は、「すでに知っている情報」がいくつか散りばめられていることも多いため、必要な部分だけを読むほうが早いかもしれません。したがって、そういうたぐいは従来の紙の本や電子書籍のほうが向いているわけです。(106ページより)

完璧に聴かなくても問題なし

なお、耳読書のときには決して気負いすぎないでほしいと著者は訴えています。やる気に満ちているのはいいことだけれども、「一言一句聴き逃さない」という気持ちで聞くと、当然ながら集中力が必要となって疲れてしまうからです。

どんな本にも、大事な箇所とそうでない箇所があり、たとえほかのことに気を取られて聴き逃してしまったとしても、前後の文脈から「だいたいこんな内容だろう」と推測できることも多いです。どうしても気になる場合や、5分、10分と進んでしまった場合は、戻して聴き直したほうがいいですが、10秒程度であればまったく気にせず、そのまま進めてしまっても大丈夫。それくらいのおおらかな気持ちのほうが、耳読書を楽しめます。(108〜109ページより)

重要な内容は繰り返されることも多いので、「また同じ内容が出てくるだろう。出てこなければさほど重要ではない」と割り切ることも可能。

手前味噌ながら、この考え方は、私が著作『遅読家のための読書術――情報洪水でも疲れない「フロー・リーディング」の習慣』(PHP文庫)のなかで提唱している「フロー・リーディング」とも共通する考え方です。

神経質になりすぎなくとも、自分にとって必要なことはフックに引っかかるように意識のどこかに残るものだということ。耳読書の場合は、さらにそうした側面が大きいのかもしれません。

良い本だな、ためになる本だなと思った作品であれば、極論、もう一回最初から聴き直せばいいだけの話です。オーディオブックは何回聴いても、耳も脳も疲れませんから。

それくらい気楽に取り組んでも、なんら問題はないのです。(109ページより)

この一文は、読書の本質を言い当てているともいえます。(108ページより)

「運動中に聴く」が超オススメ

移動中や家事・運動をしながらの読書は困難ですが、逆にそういったタイミングが向いているのが耳読書。「オーディオブックの利用傾向」に関する調査結果を確認してみても、「オーディオブックの利用シーン」「オーディオブックをよく聴く場所」という質問に対して移動中、家事中、運動中と答える方が多いのだそうです。

つまり、これらの行動中は“耳のすき間時間”ができやすく、耳読書・耳勉強には最適なタイミングだということ。なかでも、とくに注目すべきは「運動中に聴く」ことであるようです。聴くことに意識が持っていかれることによって苦しさが半減するともいわれているため、体力や筋力の限界を伸ばすことができるというのです。

また、これは私の感覚的なものではありますが、運動中にオーディオブックを聴くと、運動をしていないときに聴くよりも記憶への定着率が高まったり、深い思考ができたりする気がします。運動中は脳血流量が上がることは知られており、それが影響しているのではないか、と思っています。(117ページより)

いずれにしても、オーディオブックとトレーニングは親和性が高いと考えることができそうです。(110ページより)

記憶は、複数の感覚から何度も情報が入力されると強化されます。ですから視覚だけでなく、聴覚からも何度も情報を入力すれば、記憶力が向上するのは必然です。(「はじめに」より)

そんな耳勉強法は忙しい時代に見合った勉強法であり、誰にでも簡単に実践できるもの。その効能を実感するために、まずは本書を手に取ってみてはいかがでしょうか?

Source: ディスカヴァー・トゥエンティワン

メディアジーン lifehacker
2022年8月5日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

メディアジーン

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