「ベビーカーが来たら道を譲るようになった」 忘れてしまっている優しさに気づいた育児経験をラジオDJ・秀島史香と作家・二宮敦人が語る
対談・鼎談
『ぼくらは人間修行中』
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世界が変わる経験
[文] 新潮社
妻の家族から気づかされたこと
秀島 『人間修行中』の中に、奥様の実家を初めて訪ねて行ったら、お父さんはひたすらたこやきを焼いたり、家族がそれぞれ好きなことをやりながら一緒の部屋にいたというエピソードがあるじゃないですか。娘もあの話がすごく好きで「ドラマとかと違うけど、結婚の挨拶ってこういう感じなのかなあ」と聞かれました。
二宮 違うと思いますが(笑)。彼女の実家はすごくて、僕は崇拝に近い感情を抱いているんです。お父さんはエアコンとか使いやすい充電器の形とかを考えるプロダクトデザイナーで、目の前のものがどうやってできているかに異様に詳しいんです。お母さんは美容師で、妻も手を動かすのが大好き。いわば具象に強い一家なんです。僕は彼女と彼女の家族に会って、自分から具象がすっぽり抜け落ちていたことに気づきました。
秀島 『最後の秘境 東京藝大』の中でいかにも藝大生然としていた奥様が、『人間修行中』ですっかりお母さんになっていたのも印象的でした。今も毎月連載されているわけですが、誰に向けて書いているんですか。
二宮 とりあげるのは自分が気づいたこと、考えさせられたことですので、それを知らなかった少し前の自分に報告するような気持ちで書いています。
秀島 わたしは子育て話を聞くのが好きなんですが、連載を読んでいると「わかる!」と「へぇ!」が交互に押し寄せてきて、足し算どころか二乗、三乗の相乗効果で面白いんです。これからも娘と一緒に楽しみにしています。
二宮 ありがとうございます。