『ハンセン病問題から学び、伝える』
- 著者
- ハンセン病市民学会教育部会(編著者一覧は内容紹介に記載) [著、編集]
- 出版社
- 清水書院
- ジャンル
- 社会科学/社会
- ISBN
- 9784389501419
- 発売日
- 2022/02/14
- 価格
- 2,530円(税込)
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<東北の本棚>差別断つ教育実践紹介
[レビュアー] 河北新報
差別の連鎖をどう断つか。ハンセン病問題と向き合う教育関係者らが人権学習の実践書をまとめた。患者の強制隔離政策を違憲とした熊本地裁判決を受け、国が2001年に誤りを認めた後もハンセン病回復者や家族への偏見は根強く残る。本書は政策に加担した教育界の責任も踏まえ、多様な学びの実践例を紹介する。
当事者や市民、研究者らでつくる「ハンセン病市民学会」(大阪市)の教育部会メンバーら42人が執筆。人権学習で大切な視点や隔離の背景といった授業づくりのポイントを解説した。
私立武蔵高(東京)などで教える相川翼教諭の実践例では、倫理の授業でホロコースト(ユダヤ人大量虐殺)やゲノム編集などとともにハンセン病問題を扱う。希望者を募り、全国ハンセン病療養所入所者協議会の藤崎陸安事務局長(秋田市出身)との交流の場も設けた。「知ろうとしないことは罪」などの言葉に、生徒は「知見を深め、当時の人の気持ちを理解できるまで悩み続ける」と答え、相川教諭は「差別のない社会は遠い未来ではなく、ここでつくり続けるもの」と気付く。生徒と一緒に教師も考え、学ぶ様子が伝わる。
回復者や家族訴訟の原告の証言も掲載。父が療養所にいた宮城県の男性は、学校で過酷ないじめを受けた。新型コロナウイルス禍で差別された医療従事者の子どもたちを思い、「先生は盾となり、子どもを守ってほしい」と訴える。
回復者と交流した20代の9人が語り合う章が興味深い。「一人で問題にどう関わればいいのか」と悩み、それぞれに潜む差別心とも向き合う。「国が利用する差別に振り回されない強さを持ちたい」との言葉が心強かった。このほか、宮崎駿監督が映画「もののけ姫」誕生の背景や回復者との交友を語る国立ハンセン病資料館(東京)の講演録などを収めた。(和)
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清水書院03(5213)7151=2530円。