『星巡る 結実の産婆みならい帖』
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<東北の本棚>産婆見習いの仕事と恋
[レビュアー] 河北新報
舞台は幕末の江戸、八丁堀かいわい。一人前の産婆を目指し修業に励む結実の成長を描く物語だ。
師匠で祖母の真砂(まさご)の下、14歳で始めた結実の産婆修業は8年目。雑用を担い、産婆の技と手順を学んで、1人で赤ん坊を取り上げられるまでになった。新しい命の誕生に立ち会い、子を産み育てる女たちに寄り添う産婆。結実はやりがいを感じ、一生の仕事と思い定める。
出産で命を落とす母子や、思い人を亡くし養子を育てようと決めた女性、貧しく子だくさんな家族…。結実は出会いと経験を重ね、真砂の病や先輩すずの妊娠出産といった環境の変化にもまれながら、産婆として成長していく。
一方で、幼なじみの見習い医師・源太郎との恋には一歩を踏み出せない。多忙な医師と昼夜なくお産に飛び回る産婆との先行きが見えないからだ。18歳までとされる「適齢期」は過ぎ、仕事に追われて髪はほつれ、肌はかさかさ。源太郎に思いを寄せる若い女性が現れ、心は揺れる。
結実の仕事と恋模様を通じて描かれる悩みや葛藤は、現代の女性にも通じる。女性を力づける1冊とも言えそうだ。
著者は山形市出身で、本作は「結実の産婆みならい帖(ちょう)」シリーズの第2弾。(ま)
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朝日新聞出版03(5540)7793=858円。