仕事のキャリアに悩んだら、まず実践すべき習慣「キャリア・ワークアウト」とは

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仕事のキャリアに悩んだら、まず実践すべき習慣「キャリア・ワークアウト」とは

[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)

組織のために一生懸命に努力しつつも、「自分らしく働けていない」と感じている方は少なくないはず。それどころか、「このままいまの会社にいられるのだろうか?」と漠然とした不安を抱えている方もいらっしゃるかもしれません。

そんな人生の悩みを解決するのに有効な知見が「キャリア論」だと主張するのは、『キャリアの悩みを解決する13のシンプルな方法 キャリア・ワークアウト』(田中研之輔 著、日経BP)の著者。法政大学キャリアデザイン学部で、大学生にライフキャリアを教えながら、企業研修やセミナーにも登壇している人物です。

注目すべきは、かつては自身もキャリアに悩んだ経験があったということ。目の前の業務をこなしつつも、先のキャリアが見えない日々が続いていたというのです。

当初は「真面目に仕事に取り組んでいれば、自然にキャリアは形成される」と考えていたものの、それだけではキャリアの停滞感は解消できず、心も満たされなかったのだとか。

しかし突破口を探し、キャリア開発に関する文献を読みあさった結果、「プロティアン・キャリア」という考え方に出会ったのだそうです。

「プロティアン・キャリア」とは、個人と組織の関係性をよりよいものとし、環境や社会の変化に適応しながら、主体的にキャリアを形成していく考え方です。「プロティアン・キャリア」を軸に、悩んでいる状態から一歩踏み出すためのトレーニング=「キャリア・ワークアウト」も紹介していきます。(「はじめに」より)

「キャリア・ワークアウト」とは、自分らしいキャリアを持続的につくっていくための実践型メソッドだそう。

きょうは第2章「『自律型キャリア』への移行」内の「Career Workout 6 クヨクヨ悩んでしまう人が取り入れるべき夜習慣」に注目してみたいと思います。ここで明らかにされているのは、「キャリアの方向性が見えなくなってきた」という悩みを抱える人に対する回答です。

キャリアを中期的にデザインしていこう

ビジネスパーソンとしての初期段階ならともかく、経験を積んで仕事に慣れていくに従って、自分がどこへ向かっているのかわからなくなることもあるかもしれません。

そんなときこそ、キャリアの戦略設計が必要だと著者。今後どのような「キャリア資本」を蓄積していくのか、自分のキャリアを中長期的な視点でデザインしていくべきだということです。

キャリア資本は「ビジネス資本」「社会関係資本」「経済資本」の3つから構成されていて、「ビジネス資本」は知識やスキル、「社会関係資本」は人とのつながりやネットワーク、「経済資本」は金銭や株、不動産などの資産のことを指します。(148〜149ページより)

このことを前提としたうえで、著者はキャリア戦略を立てる際のポイントを解説しています。まず指摘しているのは、キャリア資本を蓄積していくなかで、「仕事に慣れてきた」という自覚がある場合はさらなる変化が必要だということ。

物足りなさを感じているのは、自分の「スキル」と「チャレンジ」のバランスが崩れ、目の前の仕事に没頭できなくなっているから。自分のスキルに対してチャレンジが低いと、仕事に集中できず「物足りない」「つまらない」と感じてしまうわけです。

プロティアン・キャリアを形成するためには、スキルを高めながら「キャリア資本」を蓄積し、「チャレンジ」を繰り返していくことが必須です。

「キャリア資本」は、同じ仕事を日々繰り返しているだけでは微増にとどまり、働く環境や生活環境を変えることで増加するという特徴があります。(150ページより)

ビジネスで成果を出している人は、定期的に「スキル」と「チャレンジ」のバランスを確認し、適切な負荷をかけながら「キャリア資本」を蓄積し、自分の限界を超えているということのようです。(148ページより)

キャリア戦略2つのポイント

なお、「スキル」と「チャレンジ」の関係性を把握したうえで、自分のキャリアをデザインするときには次の2つのポイントを押さえておくべきだと著者はいいます。

(1) 時間軸を意識して戦略的にキャリア資本をためる

「キャリア資本」は、変化を起こして新たな資本を獲得していけば増加するもの。そしてキャリア資本を時間の経過とともに蓄積していくものだと捉えると、1年先、3年先、5年先を見据えて「どんなキャリア資本を蓄積していくのか」を戦略的に考えることが重要。

流されるままに働いているだけだと、「仕事に多くの時間と労力を費やしているのに、スキルやネットワークはそれほど蓄積できていない」という状況に陥ってしまうわけです。

「キャリア資本」は、一朝一夕に蓄積できるものではありません。ですから、「時間軸」をお意識する必要があるのです。(153ページより)

「スキル」と「チャレンジ」のバランスをとりながら、適切なタイミングで変化していくためには、普段から種をまき、中長期的なキャリアの設計を練るべき。実現したい未来から逆算し、戦略的にキャリアを形成していくことが大事だというのです。(151ページより)

(2) スキルや人とのつながりを経済資本に転換する

「ビジネス資本」(知識やスキル)と「社会関係資本」(人とのつながり)を蓄積していくと、「経済資本」も大きく変化していくもの。では、なぜスキルや人脈を経済資本に転換できるのでしょうか?

たとえば著者の場合は、普段からキャリア論という知見を「ビジネス資本」のひとつとして蓄積し、それを使って大学生に授業を行うことで報酬を得ているわけです。つまりそれは、「ビジネス資本」を「経済資本」に転換しているということ。

とはいえ、もし著者が大学のなかだけでキャリア論を伝えているとしたら、「ビジネス資本」の増加は微増にとどまり、人とのつながりも固定化して「社会関係資本」の増加も期待できないことになるでしょう。その結果、「経済資本」の蓄積もままならなくなる可能性が出てくるかもしれません。

だからこそ著者は、キャリア論というビジネス資本を基点として、企業研修やセミナーへの登壇を行っているわけです。その根底には「プロティアン・キャリアを日本に浸透させる」というミッションがあるわけですが、いずれにせよ培ってきた「ビジネス資本」が、他の活動を展開する際の軸になっているということです。

ここからもわかるように、自分の知識やスキル、人とのつながりを軸にして活動領域を広げていけば、新たな「ビジネス資本」や「社会関係資本」を増やしていくことが可能。その結果、「ビジネス資本」と「社会関係資本」とのかけ算によって、「経済資本」が蓄積されていくということです。(154ページより)

著者によれば、業界や職種、年齢、性別、職位、国籍を問わず、誰でも、いつでも、どこからでも始められるのが「キャリア・ワークあと」の強み。悩みや不安を解消し、自分らしい生き方を手に入れるために、参考にしてみてはいかがでしょうか?

Source: 日経BP

メディアジーン lifehacker
2022年8月18日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

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