「ネット炎上」は誰しも避けて通れないのか? 全会社員が知っておくべきSNS危機管理マニュアル

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炎上しても大丈夫! 今日から使える企業のSNS危機管理マニュアル

『炎上しても大丈夫! 今日から使える企業のSNS危機管理マニュアル』

著者
小木曽健 [著]
出版社
晶文社
ジャンル
社会科学/社会
ISBN
9784794973184
発売日
2022/06/28
価格
1,540円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

「ネット炎上」は誰しも避けて通れないのか? 全会社員が知っておくべきSNS危機管理マニュアル

[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)

ここ数年、企業のネット炎上に変化が起きていると指摘するのは、『炎上しても大丈夫! 今日から使える企業のSNS危機管理マニュアル』(小木曽健 著、晶文社)の著者。以前にも著作をご紹介したことがありますが、ネット炎上の渦中にある企業から依頼を受け、その「火消し」をサポートしている人物です。

以前ならシンプルに対処できたものが、最近は偏った思想・特殊な考えに基づいた「当たり屋」的な人物が仕掛ける、対応の難しい事案が増えてきました。(「はじめに」より)

もちろん、まっとうな批判、叱られて当然というケースも多いとはいえ、「え、こんな理由で炎上するの?」「なぜ、そんなヒネくれた解釈を…」と感じざるを得ないような“ビックリ炎上”も珍しくないというのです。

独特の理論を武器に斜め上から襲いかかり、火のないところに火を放つ。追加燃料をまき散らしながら気勢を上げるその姿勢は、「当たり屋」そのものなのだとか。

私はネットという道具が好きです。ネットの「見えなかったものを、見えるようにする」「隠していたものが表沙汰になる」という特性は、悪意なく、効果的に活用されることで、世の中を良い方向に進められると思っています。

企業が問題を起こし、ネットがそれを白日のもとに晒せば、その企業に然るべきバッシングが発生するのは当然です。そのバッシングが、効果的に世の中を前進させることもあります。だからこそ、ごく一部の身勝手な理屈でネット炎上をオモチャにしている現状が許せないのです。(「はじめに」より)

そこで本書では、ネット炎上に対する理解・防止策・ケーススタディを含む対処法、当たり屋との戦い方、それを実現するための「炎上に強い組織づくり」などについて幅広く論じているわけです。

きょうはそのなかから、基本的なことを解説した第1章「炎上は避けられない」に焦点を当ててみたいと思います。

ネット炎上の定義とは?

そもそも、ネット炎上の定義とはどのようなものなのでしょうか? この問いに対して、著者は次のように答えています。

① 反社会的な言動

② 違反行為、犯罪行為

① または②に対する、ネット上のバッシングが集約されたもの(18ページより)

これがネット炎上。「個人におけるネット炎上」ならば、これだけで充分なのだそうです。「もっとさまざまな理由があるのでは?」と思われるかもしれませんが、次の2つの理由から、ネット炎上をシンプルに定義しているというのです。

まず1つ目は、世間から馬鹿にされる振る舞いをして笑われただけなのに、「いやー、炎上しちゃってさ」と、あたかも特殊な世界に住む人たちに絡まれてしまったというように済まそうとする人たちの存在。なんでもかんでもネットのせいにしようとするようなタイプです。

世間があなたの愚かな振る舞いを見て、あきれただけですよ、というシンプルな話なら、わざわざネットを持ち出すまでもありません。反社会的でも犯罪行為でもない、バカをやって世間から笑われただけ。

ならば、それは昔から存在している単なる嘲笑、それがネットで起きただけ。ネットじゃなくても起きていた現象に、わざわざ「ネット炎上」なんて新しい名前をつけてあげる必要はありません。(19〜20ページより)

2つ目は、「ネット炎上」が持つマイナスのイメージ。「◯◯が炎上した」と聞けば、多くの人は「なにをやらかしたんだ」「きっとあいつが悪いんだろう」と考えるものかもしれません。

ところが実際は、必ずしも当人に非があるとは限らなかったりもするもの。単なる言いがかりだったり、早とちりや意見の違い、あるいは濡れ衣だったというケースもあるからです。しかも「事実ではなかった」と判明したころには、世間はもうその炎上への関心を失っていたりもするものでもあります。

「ネット炎上」をシンプルに定義すれば、ネットの騒動を目にした時に、「果たしてこれはネット炎上と言えるのか」と、誰もが検証しやすくなります。

そうなれば、かわいそうな濡れ衣や、「これって好きか嫌いか、単に好みの議論だよね」というネット炎上「モドキ」を、少しは減らせると思うのです。(20ページより)

これら2つの理由から、著者は「反社会的な言動か否か」「違法行為、犯罪行為があったかどうか」のみをネット炎上の判断基準にしているというのです。それ以外のネットの騒動は、単なる反響、世間からのリアクションに過ぎないのだと。(18ページより)

なにが違う? 企業のネット炎上

ただし、企業のネット炎上となるとまったく話が変わってくるのだとか。

そもそも企業のサイトや公式アカウントが、反社会的な情報を発信したり、法に触れるような投稿をしたりすることは基本的にはありません。たいていは社員がプライベートのSNSに投稿した内容が原因だったり、企業アカウントに個人的な内容を「誤爆」(誤投稿)してしまったケースであるわけです。

にもかかわらず、企業のネット炎上が頻発しているように感じられる理由は、企業イメージが傷付き、売上に響くネットの騒動はすべて、漏れなく、幅広く、ネット炎上と言わざるを得ないからです。

ちょっとした情報発信のミスや単なるボタンの掛け違いでも、バッシングによってビジネスが吹き飛べば、ネット炎上の定義などはもはや無意味。(21〜22ページより)

もし騒動の影響で事業の継続が困難になったりしたら、ネット炎上か否かなどどうでもいい話。事業の安定、危機管理という観点で考えれば、企業のネット炎上はあえて曖昧で幅広く定義し、しっかりと備える必要があるということです。

「企業のネット炎上」は、個人のそれとは定義も意味も根本的に違うということ。したがって企業はネット炎上という、非常に幅の広いゴールポストを守らなければならない。そこが、「個人のネット炎上」と大きく異なるポイントだというのです。(21ページより)

冒頭でも触れたように企業向けの「ネット炎上研修」などを続けてきた著者は、企業の方々がネット炎上のなにを不安に思い、なにを知りたいのかを見にしみて感じてきたのだといいます。

つまり本書おいては、そうした声に応えているわけです。炎上社会のなかで健全な企業活動、広報活動を行なっていくために、参考にする価値は大いにあると思います。

Source: 晶文社

メディアジーン lifehacker
2022年8月23日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

メディアジーン

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