英検やTOEIC試験に振り回されない英語学習のコツを教えます!

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英語学習のつまずき50の処方箋

『英語学習のつまずき50の処方箋』

著者
西澤ロイ [著]
出版社
ディスカヴァー・トゥエンティワン
ISBN
9784799328897
発売日
2022/08/26
価格
1,650円(税込)

英検やTOEIC試験に振り回されない英語学習のコツを教えます!

[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)

英語学習のつまずき50の処方箋』(西澤ロイ 著、ディスカヴァー・トゥエンティワン)の著者は、「イングリッシュ・ドクター」(本人いわく、英語学習に関する“やさしいお医者さん”)。英語学習におけるつまずきとなる「英語病」の研究と、それを“治療”する活動を展開している人物です。

そのような立場から、英語学習の仕方については思うところがあるようです。「がんばって学習しているのにどうも上達が感じられない」とか、「今度こそ英語を身につけたいのにやる気が続かない」というような場合、その原因は英語病にあるというのです。

英語病の中には、英語の上達を阻害したり、挫折を引き起こしたりするものが多くあります。もしあなたが、

・何から学べばよいか分からない

・上達を感じられていない

・英語学習へのモチベーションが下がっている

・壁にぶつかっている

・挫折してしまった

のいずれかに当てはまるのであれば、やみくもに英語を学習するのではなく、英語病を治すことを優先すべきです。(「はじめに」より)

そこで本書では、7分野における50種もの英語病について、それらを治すための方法を紹介しているわけです。チャートによるセルフ診断も行えるので、いろいろ役に立ってくれそうです。

ただしそれらは、各人が個別に確認していただくべきものでもあるはず。そこで、きょうは別の側面に焦点を当ててみることにしましょう。取り上げたいのは、英語の資格試験に焦点を当てた第7章「資格試験科」内の「英語の試験に関する大前提」。

実際のところ、英語の資格試験に振り回されたり、大事なことを見失ったりしている人も少なくないというのです。そして、まず知っておくべきは「英語の試験には基本的に3種類ある」ことなのだとか。

言語の試験には3種類ある

代表的な英語の試験といえば、到達度を見る試験(achievement tests)。学校で行なわれる定期試験や、合格者に免許・資格が与えられる試験など、学習範囲をどこまで理解できているかを測るものです。それらは試験範囲が決まっているため、対策が行ないやすいのが特徴。

2つ目は、診断を行なうための試験(diagnostic tests)。理解できていないポイントや、かけているスキルなどを診断する試験ですが、このタイプは一般向けにはあまり存在していないそう。

そして3つ目が、実力を測る試験(proficiency tests)。英語の習熟度(proficiency)、すなわち実力を測るためのもので、英検やTOEICなどの試験はすべてここに分類されるわけです(いわゆる「資格試験」もこの範疇に収まるもの)。

試験の種類や級によって使われる英語の難易度や出題の傾向は違うものの、出題範囲は基本的に存在しないのがこれ。

いずれにしても実力を測るための試験である以上、大事なのは実力をつけること。実力さえあれば、基本的には現在の自分に見合った結果(スコアや合格)が得られるのです。(236ページより)

英語試験で知っておくべき重要な2種類のアプローチ

しかし著者によれば、もうひとつ試験に関する重要な分類があるそう。

「直接的」と「間接的」という2種類のアプローチがそれで、その点を考慮に入れる必要があるというのです。

直接的なアプローチというのは、例えば面接を実施することで、実際に英語を目の前で使ってもらい、それによって評価を行なうという手法です。

英検(3級以上)、IELTS、国連英検(A級以上)などでは直接的な面接試験も行なわれています。(237ページより)

実際に英語を話しているところを観察すれば、実力は一瞬で明らかになるわけです。ただし、面接を実施/受験する手間や、あるいは費用の問題なども絡んできます。

そこで間接的な試験では、例えば4択の選択肢の中から正解を選べるかどうかで「英語をきちんと理解できているか」を判断します。

代表例がTOEIC L&R(Lはリスニング、Rはリーディングの意味)であり、全てマークシートによる選択方式になっています。(237ページより)

なお、現在のTOEICではS&W試験(話す&書くスキルを測る試験)が存在します。が、それが実施される以前は「聞く力」と「読む力」の間接的なスコアをもとに、「このくらい話せるはず」という推測が行なわれていたのだそうです。

たとえば海外駐在員の目安といわれる730点以上があれば「どんな状況でも適切なコミュニケーションができる素地を備えている」、860点以上なら「Non-Nativeとして十分なコミュニケーション能力を備えている」など。(237ページより)

TOEICの実施元であるETSは、もはやそのようなことは言わなくなりましたが、一般の認識は「TOEICでもハイスコアを持っている人は英語がすごくできる」というものです。

しかし間接的な試験だからこそ、「スコアがあるから、それだけの実力を備えている」とは言えないケースも十分にあり得るわけです。(238ページより)

それでも試験のメリットは大きい

とはいえ、受験料が比較的安く、すべてマークシートによる選択式で手軽に受験できる間接的な試験のメリットは大きく、事実TOEIC L&R試験は毎年200万人前後が受験しているのだといいます(実際に話すことを求められるS&W試験の受験者は毎年わずか3〜4万人程度)。

質の高い間接的な試験を受けるのであれば、その試験対策を行なうことが、実力をつける学習に直結しやすいということになるでしょう。しかし、とくに間接的な試験の場合、求めるべきものは「英語の実力」であって「資格」や「ハイスコア」ではないはず。著者も、その点をしっかり押さえておくべきだと述べています。(238ページより)

著者のことばを借りるなら、本書は「英語学習における人間ドックのようなもの」。解説を読みながら実践していくことで、現在の自分が直面している解題の解決方法が明らかになり、今後の英語上達への道のりが見えてくるというのです。英語学習でつまずいている人は、参考にしてみるといいかもしれません。

Source: ディスカヴァー・トゥエンティワン

メディアジーン lifehacker
2022年8月25日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

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