IT業界のB to B営業で行き詰まりを感じたら、「仮説提案営業力」が強力な武器になる!

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IT業界のB to B営業で行き詰まりを感じたら、「仮説提案営業力」が強力な武器になる!

[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)

成果に直結する「仮説提案営業」実践講座』(城野えん 著、日本実業出版社)は、IT業界などのB to B営業で強力な武器となる「仮説提案力」を、仮説の立て方、仮説提案資料の作り方、商談トークへの落とし込み、パートナーセールスでの活かし方などを通じて解説した書籍。

その魅力は、「新製品が売れない」「新規開拓が苦手」という悩みを解消できることだといいますが、そもそも仮説提案営業とはどういったものなのでしょうか?

「仮説」とは、まだ十分に情報が揃っていない段階、あるいは分析が済んでいない段階で持つ、仮の結論のことを指します。そして、「仮説思考」とは、立てた仮説に基づいて仮説の実行、検証、修正を行っていく思考法のことです。(22ページより)

「仮説思考」ということばは、もともとボストン・コンサルティング・グループが、問題発見能力と問題解決能力の向上を目的に提唱したものだそう。問題解決のプロフェッショナルが、当たり前のように使う思考フレームワークだということです。

「仮説思考」を活用すれば、問題に対していまだ解を持ち合わせていない状況においても「これが解決策なのではないか?」と仮の結論を導き出すことで、考慮・調査すべきことを大幅に絞り込めるため、非常に効率良く問題解決を進めていくことができるのです。(22ページより)

だとすれば、「仮説提案営業」を実践するためのベースとなる「仮説思考」をぜひとも身につけたいものです。そこで、基本的な考え方をご紹介しましょう。

仮説提案営業における「仮説思考」の鍛え方

「仮説提案営業」を実践するためには、まずそのベースとなる「仮説思考」を身につける必要があるそうです。そして、そのことに関連して著者は興味深いことを述べています。

「仮説思考」を鍛えるための有名なトレーニングに、事実を単なる事実として受け止めるのではなく、So what?(だから何なのか?)、で繰り返し自問自答して仮説を深掘りしていく、というものがあります。

ただ、自問自答するだけでは思考力は鍛えられても受注力を鍛えることはできません。なぜなら、自分が売りたいものにつながらない仮説が立ったところで、営業にとっては何の意味もないからです。営業に必要なのは、あくまでも、自社製品を受注するために必要な「仮説提案力」になります。(35ページより)

絶対にニーズがなさそうな顧客と自社の製品・サービスを、「So what?(だから、なんなのか?)」でつなげながら自問自答していく。そして、そうすることによって、「顧客と製品の間につながりのある課題解決ストーリーをつくり上げてみる」

日ごろから、そうしたトレーニングを行うことが営業のポテンシャルを高めていくということのようです。(35ページより)

仮説思考を鍛えるには

著者はここで、顧客を「日本政府(内閣府)」、製品・サービスを自身が提供している「仮説提案営業研修」と仮定してこの考え方を解説しています。

普通に考えれば、「営業研修」のニーズなどない日本政府に営業研修を売り込むことはなんの問題解決にもならないように思えます。では、そこでいかにして顧客とサービスをつなげて「課題解決ストーリー」をつくり上げればよいのでしょうか。

このことを考えるうえで大切なのが、So what?の自問自答で課題を深掘りすること。その際、まず顧客のミッションからスタートするとわかりやすいそうです。なお日本政府のミッションは多種多様ですが、ここでは「国民の生活を豊かにすること」としています。

「日本政府のミッションは国民の生活を豊かにすることです」

→So what?①:だから何?

「国民の生活が豊かになるためには多くの税金が必要です」

→So what?②:だから何?

「人口が減ってしまうと1人当たりの税金負担が重くなり生活が苦しくなります」

→So what?③:だから何?

「そのため、少子化の対策が急務です」

→So what?④:だから何?

「少子化対策の一つに、働き方改革があります。働き方改革の一つに、長時間労働の是正があります」

→So what?⑤:だから何?

「長時間労働を是正するには、労働生産性を向上する必要があります」

→So what?⑥:だから何?

「そのためにはITシステムの導入が日本中で普及することが必要です」

(36ページより)

このように、純粋な疑問を挟み込みながら考えを進めていけば、やがて答えに近づいていくということ。

なお、ここでのポイントは、深掘りする際に「MECE(もれなくダブりなく)を意識することだといいます。そうしながら「なにがいえるか」を考えつつ、そのなかから自社製品・サービスとつながりそうなものをピックアップしていくわけです。

少子化対策は大きく「子育て支援」と「働き方改革」があり、働き方改革の中身は多岐に渡りますが、自社サービスにつながりそうなものとして、「長時間労働の是正」に注目します。

同じように、「長時間労働の是正」のなかから、「生産性向上」を選び、ITシステム導入の話へとつなげていきます。(37ページより)

(中略)

このように、So what? で深掘りをしていくことで、「国民の生活を豊かにする」という日本政府のミッションを達成するためには、「労働生産性の向上」が必要で、そのためには「ITシステムの導入」を普及させることが、顧客(日本政府)にとって重要であることを伝えるストーリーができ上がりました。(37ページより)

いうまでもなく、営業にとってのゴールは自社製品やサービスを売ることです。そこで、このように自社製品につながりそうなものを探し出し、取捨選択してストーリーを組み立てていくのです。(35ページより)

ここでご紹介したのは、あくまで初期段階の方法。しかし、こうした「仮説提案営業」の考え方を身につけていければ、ビジネススピードが速いIT業界を乗り越えていくことができるでしょう。

しかもそれはIT業界のみならず、あらゆる業界の自社製品・サービスに置き換えることもできるはず。だからこそ、将来的な営業のあり方を見極めるうえでも、本書を参考にしておきたいところです。

Source: 日本実業出版社

メディアジーン lifehacker
2022年9月5日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

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