釣らぬ魚の料理算用?! オールカラーイラストの釣魚料理本

レビュー

  • シェア
  • ポスト
  • ブックマーク

釣らぬ魚の料理算用?! オールカラーイラストの釣魚料理本

[レビュアー] 夢眠ねむ(書店店主/元でんぱ組.incメンバー)

 タイトルに「一生幸せになれる」というフレーズ、なかなか言えない言葉である。「一尾の魚の命を余すところなくいただくことで、人はこんなに幸せになれる」という著者の並々ならぬ想いが、本書には詰まっているのだ。

 大垣友紀惠さんは12歳の頃、ANA機体デザインコンテストで最優秀賞を受賞した天才少女だった。飛行機を空飛ぶクジラに模した「マリンジャンボ」は、彼女の魚愛を感じられる作品である。彼女はのちにデザイナーになり、魚愛は深まり続け、釣りと釣った魚を食べることが趣味になった。彼女のライフワークである釣魚料理のレシピをイラストで描きまとめたのがこの本である。オールカラーページで、合間に漫画やコラムがちりばめられていて、著者の熱量に圧倒されながらずっと夢中になれる。

 マハゼだけでも5種類の捌き方が紹介されていることにびっくり。魚屋の娘なのに何となくで魚を捌いていた私は目から鱗である。捌き方ごとにおすすめ料理が大きなイラストで展開されているので「私にも出来るんじゃないか」という気になってくる。めちゃくちゃ絵の上手い友達のノートを見せてもらっているみたいに、わかりやすく、面白いのに勉強になる。アジが釣れたら、絶対アジフライにしよう。クロダイが釣れたらアクアパッツァにして、さらにパスタにして……釣らぬ魚の料理算用で頭がいっぱいになる。

 私のイチオシポイントは、ページが180度パッカリ開くこと!

 魚を捌いているときに、ページが閉じちゃったらベタベタの手で本を触らなきゃいけない……けど、そんな心配ナシ。料理本だけど魚図鑑みたいだし、いつも釣りっぱなしでお料理を誰かに任せている方にも手に取っていただきたい。自分で釣って自分で捌いて自分で食べれば、タイトル通り一生幸せになれること間違いなし。海の幸に感謝を忘れずに!

新潮社 週刊新潮
2022年9月15日号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

  • シェア
  • ポスト
  • ブックマーク