『新疆ウイグル自治区』熊倉潤著(中公新書)

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新疆ウイグル自治区

『新疆ウイグル自治区』

著者
熊倉 潤 [著]
出版社
中央公論新社
ジャンル
歴史・地理/外国歴史
ISBN
9784121027009
発売日
2022/06/21
価格
946円(税込)

書籍情報:openBD

『新疆ウイグル自治区』熊倉潤著(中公新書)

[レビュアー] 国分良成(国際政治学者・前防衛大学校長)

 世界最強の監視体制下にあるとも言われる新疆ウイグル自治区。本書は入り組んだ地域の歴史と現状を簡明に描写した好著だ。

 中国政府は漢代に同地域が版図に組み込まれたと言うが、その後イスラム化して東トルキスタンと呼ばれるこの地域と歴代王朝との関係は実に複雑だ。

 新中国建国当初、毛沢東ですら少数民族重視の面があり、同地域の指導者となった習近平(シージンピン)の父習仲勲も穏健路線を追求した。その後、ウイグル人のセイフディンが指導者となったが、それ以降は移住も含め漢族化と中国化が着実に進んだ。

 問題の深刻化は開発利益と若者が沿海地域に流出した改革開放以降だ。漢人統治と民族差別への抗議行動が頻発、9・11同時多発テロ以後、当局はこれを「テロ」と認定し、「職業技能教育訓練センター」を各地に設置、中国化教育を徹底している。

 これは「ジェノサイド」と言えるのか。著者は民族の「破壊」と「改造」の違いを念頭に、単純に概念規定できないとする。行間に地域への想(おも)いを滲(にじ)ませつつも、抑制された著者の学術姿勢に好感が持てる。

読売新聞
2022年9月9日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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