【気になる!】文庫『天工開物』宋應星著、薮内清訳注
[レビュアー] 産経新聞社
中国・明末に地方長官を務めた学者による産業技術書。穀類・製陶・製紙・兵器など18の項目に分けて、資源を無駄にしない知恵と技術を豊富な挿図とともに記述している。書名は、自然界から人の知恵により物を生み出すという意味。
各項目の冒頭で述べる著者の考えが、現代に通じる内容で味わい深い。例えば製油の項目では「天道が昼夜を等分しているのに、人々は夜を日に継いで仕事をなしとげる」という疑問から書き起こす。たき火や雪明かりより、油の明かりが勝るという話につながる。
昭和44年に東洋文庫で刊行された古典の再刊行。(平凡社ライブラリー・2420円)