健康に最高の投資をしよう。150年前にハマトンが語った「知的生活」を送るための知恵とは?

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健康に最高の投資をしよう。150年前にハマトンが語った「知的生活」を送るための知恵とは?

[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)

P.G.ハマトンは、英国の著述家であり、美術雑誌の編集者でもあった人物。きょうご紹介する『ハマトンの知的生活のすすめ エッセンシャル版』(P.G.ハマトン 著、三輪裕範 訳、ディスカヴァー・トゥエンティワン)は、そんなハマトンが1873年に刊行した知的生活論、自己啓発論の名著である『知的生活』から現代人に必要な部分を精選して編訳したものです。

ハマトンの『知的生活』といえば、渡部昇一氏がベストセラーとして知られる『知的生活の方法』(講談社現代新書)を執筆するきっかけとなった書籍としても有名。知的生活や自己啓発に多少なりとも関心のある方にとっては、おなじみの著作かもしれません。

ハマトンはここでさまざまな問題について論じているわけですが、とくに強調しているのは、知的生活における健康の重要性

「傑出した知性の持主が自己の能力を十二分に発揮し続けていられるのも、彼らが、机に向いづめの生活からくる悪影響を防いでいるからにほかなりません」とし、運動不足による肉体及び知的活動面における重大な悪影響に警鐘を鳴らしているのです。

では、そうした悪影響を防ぐためにはどうすればいいのでしょうか?

それに対してハマトンは、「幸運なる弛緩状態」になることをすすめています。

ハマトンは、「疲れきった頭脳は、自ら進んで厳しい仕事をもとめ、さらに疲労を増そうとはけっしてしません」とし、そのようなときには「自然の本能が要求するものを容れてやり、たとえわずかの間でも、疲れるような仕事のことなど忘れるように生活を調整すること」をすすめています。(「編訳者まえがき」より)

健康の大切さはいまでこそ常識ですが、約150年も前にそこに焦点を当てたハマトンの先進性には驚かされるばかり。しかも、その考え方の多くは現代にも通用するものなのです。

そこでII「健康こそが知的生活の基盤」のなかから、シンプルでありながら確信をついたトピックスの数々を抜き出してみたいと思います。

知的活動には肉体的な基礎が不可欠だ

あらゆる知的活動は、十分な肉体的基礎があって初めて可能になるもの。そのことを忘れてはならないとハマトンは説いています。

知的創造活動と心身の状態との間には、密接な関係があるということです。(009より)

健康は蓄えておくことができない

秋に二週間ほど旅行して英気を養い、それで一年分の健康を蓄えようとするような行いを、ハマトンは「愚かなことだ」と断じています。なぜなら、一週間の英気は、その週のうちに補っておかなければならないものだから。(010より)

どんな薬も運動に勝るものはない

体を動かすことは、これまでに開発されたどんな薬よりもはるかに大きな効果があるといいます。傑出した知性の持主が十二分に能力を発揮することができたのも、彼らが机に向い続ける生活からくる心身の悪影響を、体を動かすことによってうまく防いできたからだというのです。(011より)

体が求める休息を受け入れよ

傑作は短期間に集中して創作したときに生まれることが多い。しかし、それはときに死をもたらす危険な習慣でもある。(012より)

自然の本能が急速と気晴らしを求めているときに大切なのは、それを静かに受け入れること。そして、しばしのあいだ幸福な安らぎに身をゆだねたほうがいいのだそう。

つまりはそれほど、知的活動にとって休息することには重要な意味があるということなのでしょう。(012より)

完全な休息が必要だ

知的生活に無理は禁物であり、その生活は夏のそよ風のようであってほしい。夏のそよ風は人に完全な安らぎをもたらす。(013より)

生きている間に夏のそよ風のような完全な休息をとることができれば、あわてて“墓場での休息”を求める必要もないのだとハマトンは記しています。(013より)

知的生活は良質な睡眠から生まれる

ドイツの哲学者カントは、満足な知的生活をするためには、肉体的な健康がなによりも大切であることを人一倍理解していたのだとハマトンは振り返っています。そればかりか、一日の知的生活の質を左右するもっとも重要な要因が「前夜の睡眠」であることも、よくわかっている人だったのだとか。(014ページより)

知的生活は健康な肉体から生まれる

短期的に見た場合、肉体的生活と知的生活は両立しないことが多い。しかし、長期的に見れば、両者は完全に調和している。(015より)

理由は明白。憂鬱で体調がよくないときよりも、生き生きと健康なときのほうが頭脳ははるかに明晰に働くものだからです。(015より)

健康に最高の投資をせよ

重要な知的労働を成し遂げるためには、長年にわたって健康を維持しなければならないとハマトンは主張しています。だからこそ、知的生活者にとっては、健康を維持するために払う犠牲は最高の投資なのだとも。(016より)

当然ながらハマトンは健康以外にも、時間、教育、金銭、習慣と伝統、女性と結婚、貴族階級と庶民階級、交際と孤独、知性の衛生学、商売と知的職業、環境の問題など、充実した知的生活を送るために考えておくべきさまざまな問題について言及しています。

それらのなかから心に響いたことを取り入れてみれば、現代の生活もよりよいものになるのではないでしょうか。

Source: ディスカヴァー・トゥエンティワン

メディアジーン lifehacker
2022年9月12日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

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