「笑い」と「涙」は表裏一体 結婚相談所のリアルとは?

レビュー

  • シェア
  • ポスト
  • ブックマーク

余計なお世話いたします 半年以内に結婚できる20のルール

『余計なお世話いたします 半年以内に結婚できる20のルール』

著者
大屋 優子 [著]/現代 洋子 [イラスト]
出版社
集英社
ジャンル
文学/日本文学、評論、随筆、その他
ISBN
9784087817232
発売日
2022/07/26
価格
1,320円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

「笑い」と「涙」は表裏一体 結婚相談所のリアルとは?

[レビュアー] 渡邊十絲子(詩人)

 現代日本の結婚事情にうとくなって久しい。社会勉強だと思って、結婚相談所のリアルを覗いてみる。

 ブライダル関連の会社を経営していたことから、「結婚」の一つ手前、「婚活」も手がけるようになった著者。いま、出会いの機会は多様化している(たとえばマッチングアプリなら気楽に登録できるし、地元の婚活イベントなら自分の交友範囲に近い人との出会いも期待できる)から、個人情報を明かしあい、それ相応の金額も払う結婚相談所は、よりハードルが高い場所になった。しかしそれだけに、「本気の人」が集まるところでもある。

 紹介された20の実例は、どれも山あり谷あり、真剣そのもの。みんな自分の人生を理想に近づけるのに必死である。たまたま近くにいた人と結婚し、とっくに銀婚式も過ぎてしまったわたしには想像もできないようなパッションとエネルギーだ。

 著者は「お世話をする」側の人だから、あれこれ気をもむし、アドバイスも懇切ていねいで、ケアも行き届いている。けれども笑ってしまうのは(こういう「笑い」は「涙」と表裏一体のものだ)、会員(結婚したい当人)が著者のアドバイスをぜんぜんきかないこと。みんな図太いな。そして頼もしい。

 考えてみれば、相談所で婚活をする目的は「自分に合った相手と出会い結婚する」ことであって、「カウンセラーのアドバイスどおりに行動する指示待ち人間になること」ではないのだ。わたしが会員だったらカウンセラーの顔色をうかがい、言いなりになること間違いなしだが、みんなそれぞれ悪びれずに我が道を行っている。いいじゃないか。

 専門家がNGと言っている行動をやめない人は、結婚後も大きくは変わらないだろう。だったら素の自分で勝負するほうが潔いのかも。空気の読めない会員たちがどうか幸せをつかめますようにと、祈らずにはいられない。

新潮社 週刊新潮
2022年9月22日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

  • シェア
  • ポスト
  • ブックマーク