『ウィリアム・ギブスン エイリアン3 (原題)ALIEN3』ウィリアム・ギブスン脚本/パット・カディガン著(竹書房)

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ウィリアム・ギブスン エイリアン3

『ウィリアム・ギブスン エイリアン3』

著者
ウィリアム・ギブスン [著]/パット・カディガン [著]/入間 眞 [訳]
出版社
竹書房
ジャンル
文学/外国文学小説
ISBN
9784801931701
発売日
2022/06/30
価格
2,200円(税込)

書籍情報:openBD

『ウィリアム・ギブスン エイリアン3 (原題)ALIEN3』ウィリアム・ギブスン脚本/パット・カディガン著(竹書房)

[レビュアー] 宮部みゆき(作家)

ボツ脚本 面白さ百万点

 映画『エイリアン』(一九七九年)とその続編『エイリアン2』(一九八六年)は、凶暴な異形の異星人vs人類という同じ設定を用いながら、「密室ホラー」から「戦闘アクションドラマ」へとコンセプトをがらりと変えたことで、二作とも映画史に残る傑作となり、興行的にも成功した珍しい事例として知られている。

 残念ながら、続けて制作された『3』と『4』ではこの奇跡は起こらなかった。原因はいろいろあるが、『3』に限って考えるならば、最大のネックは『2』の重要な子役――シリーズの主役である女性航海士リプリーの決死の闘いによって救出された惑星開拓民の少女ニュートが、『3』では姿を消してしまうことだろう。

 しかし『3』の製作準備段階では、これとはまったく違う脚本が第二稿まで存在しており、惜しくもボツになっていた。そちらではニュートも、やはり『2』の重要なキャラクターだった宇宙海兵隊のヒックス伍長もビショップも活躍する。ストーリーも『2』から無理のない流れでつながっている。この面白さ百万点の脚本を書いたのは、八〇年代のSF界に「サイバーパンク」という新しいムーブメントを起こした立役者、SF作家のウィリアム・ギブスンだ。本書は一九八七年十二月にギブスンが書き上げた第一稿を忠実にノベライズしたものである。

 また本書は、創作に興味がある方には、映画と小説の根本的な違いとか、作中のキャラクターの生殺与奪を握っているのは実は作者ではないとか、様々なことを考えさせてくれる貴重な作品でもある。この脚本がボツになった理由の一つは、舞台となる二つの宇宙ステーションのあいだに冷戦時代の政治的対立が存在しているのが古くさいからだったそうだ。だが、二一世紀の今の現実はどうだろう。国際社会にはまた冷戦の緊張が蘇(よみがえ)りつつある。人類はそう易々(やすやす)とは変化も進化もできないのだ。ギブスンは、やはり慧眼(けいがん)だったのだと思わざるを得ない。入間眞訳。

読売新聞
2022年9月16日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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