『哲人たちの人生談義 ストア哲学をよむ』國方栄二著(岩波新書)

レビュー

0
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

哲人たちの人生談義 ストア哲学をよむ

『哲人たちの人生談義 ストア哲学をよむ』

著者
國方 栄二 [著]
出版社
岩波書店
ジャンル
哲学・宗教・心理学/哲学
ISBN
9784004319351
発売日
2022/07/22
価格
946円(税込)

書籍情報:openBD

『哲人たちの人生談義 ストア哲学をよむ』國方栄二著(岩波新書)

[レビュアー] 苅部直(政治学者・東京大教授)

 ヒューマニティ、人間の尊厳、人格の価値。いまの日本では道徳や法について語るとき、普通に使われる言葉である。しかし、そうした言葉が生まれた西洋で、どんな意味あいをこめて語られてきたのか、意識することは少ないだろう。

 西洋思想史の源流においてこうした概念について正面から論じたのは、古代のギリシア・ローマ、特に後者で展開したストア哲学である。この本は、その学派の後期に属する哲人たちに焦点をあて、幸福な生き方や、運命と自由との関係について、彼らが考えた足跡を明らかにする。

 自分の運命も、また健康や財産や評判も、みずからの力では左右できないものと彼らは考え、内なる心を生き生きと働かせ、情念を制御する営みに真の「自由」を見た。だがそれは、現実からの消極的な逃避ではない。むしろ逆境に動じない意志の強さを、人である証として説いたのである。

 現代人の常識に反するような論法が、ところどころに見えることに困惑するかもしれない。だがそれを読み解くうちに、哲人たちの思考の道筋を追体験し、深く味わうことができる。

読売新聞
2022年9月16日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

  • このエントリーをはてなブックマークに追加