『ヤング中高年 人生100年時代のメンタルヘルス』竹中晃二 記念寄稿「人生を楽しむこころのあり方とは何か」

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ヤング中高年 人生100年時代のメンタルヘルス

『ヤング中高年 人生100年時代のメンタルヘルス』

著者
竹中 晃二 [著]
出版社
集英社
ジャンル
社会科学/社会科学総記
ISBN
9784087212310
発売日
2022/09/16
価格
946円(税込)

書籍情報:openBD

『ヤング中高年 人生100年時代のメンタルヘルス』竹中晃二 記念寄稿「人生を楽しむこころのあり方とは何か」

[レビュアー] 竹中晃二(早稲田大学人間科学学術院教授)

人生を楽しむこころのあり方とは何か

時代をサバイブ、ヤング中高年

 現在の50~60代の人々の多くは、企業において「働く管理職」であり、現場の仕事のほか、担当する仕事全体の段取りと部下の管理というふたつの責務を日々こなさなければなりません。現場の仕事では、自分がバリバリ働いていた40代のときと異なり、ときに体力・気力の低下を感じ、また現場人としての仕事や作業能力が低下していくという感覚と日々向き合っています。しかし、この世界で「やってきた」「がんばってきた」という仕事への自負心も強く、それらの低下を素直に認めようとはしないでしょう。あくまでも、「できる」自分に誇りを持って、日々仕事に励んでいます。このように、気持ちが若い、一見元気そうな、でもどこかで不安も併せ持つ中高年を集英社新書の新刊では「ヤング中高年」と呼んでいます。
 ヤング中高年は、仕事上の管理業務について、昨今のブラック体質への批判にさらされ、その懸念から若いスタッフに対して安易に業務を押し付けるようなことができません。押し付ければそれだけの代償を払わないといけないことを重々承知しているからです。しかし、実際のところ、ヤング中高年は、部下からパワハラと告発されないように自制しているだけで、さまざまなキャラクターを持つ若手部下に対してもどかしい思いも抱いています。彼らとどのように接していけばよいのかと悩みながら、言動や指導の方針が定まりません。また、飲み会の席やオフィスなどで彼らが自分をどのように見ているのかも気になります。上層部からは、自分の管理能力のなさを指摘する声もあり、上と下に挟まれた状態で苦悩が深まるばかりです。
 ヤング中高年は、管理職として、言いたいこともストレートに言えず、キリキリした毎日を過ごさざるを得ません。世間では、人生100年時代、50、60代はまだまだ若いと言われていますが、この年代では体力・気力の低下だけでなく、こころを「病む」人が多くなっています。仕事への動機づけも高く、自分はまだ「できる」と感じている一方で、部下を持ち、難しい管理業務をこなさなければなりません。また、介護や家庭の問題、ローンなどの金銭的負担も伸(の)し掛かり、公私ともにストレスを抱える人が増えています。

サバイブだけの人生はとても悲しい

 ヤング中高年にとって、昨今のメンタルヘルス問題についての願いは、とにかくこの時期をいかに生き抜くか、耐え忍ぶか、かもしれません。健(すこ)やかに、穏やかに生きるなど生半可なことではなく、いわゆるいまの時期をサバイブできればそれでよいと考えている人も多いことだと思います。でも、いまをサバイブしたとして、その先に穏やかで満ち足りた人生が待ち構えているのでしょうか。人生100年時代、そういう時代に生きるヤング中高年は、ただサバイブするだけの人生を送るのではなく、また楽しみを先送りすることでもなく、いまを充実させ、楽しむ術(すべ)を身につけねばなりません。
 今回刊行した『ヤング中高年 人生100年時代のメンタルヘルス』では、ヤング中高年のこころを守り、ポジティブに生きる術を教授します。ポジティブに生きる術とは、単に悪くなってしまったメンタルヘルスをもとの状態に戻すということだけでなく、悪くならないように予防する方法、またいま以上によくする方法のことです。ヤング中高年はこの方法を学ぶことで、この時代に生きがいや満足感を持てるように、ただ待っているのではなく、自分から積極的に活動することで前向きに生きることができるようになります。
 本書で述べるポジティブ・メンタルヘルスとは、人生を楽しむこころのあり方です。人生を楽しむためにどのようなことを行ったらよいのか、その方法を「メンタルヘルス・プロモーション」と呼び、ヤング中高年に具体的な活動の実践を勧めています。本書では、自分のことを知り、自分のメンタルヘルスをよくすることとあわせて、自分とつながる他者のメンタルヘルスをよくする方法も教授します。

竹中晃二
たけなか・こうじ●早稲田大学人間科学学術院教授。
1952年大阪府生まれ。早稲田大学教育学部卒。ボストン大学大学院博士課程修了。Doctor of Education(ボストン大学)、博士(心理学)(九州大学)。主な著書に『運動と健康の心理学』『アクティブ・ライフスタイルの構築―身体活動・運動の行動変容研究―』等がある。

青春と読書
2022年10月号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

集英社

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