<東北の本棚>盛岡の文化拠点を特集
[レビュアー] 河北新報
花巻市の萬鉄五郎記念美術館が、2021年12月~22年4月にかけて開催した企画展「CAFÉ モンタン-展」の図録である。
「CAFÉ モンタン」は、同市出身の小瀬川了平が、東京大文学部中退後の1959(昭和34)年、盛岡市の大通裏に開いた画廊兼スナックだ。東京や地元で活躍する芸術家の展覧会を次々と開催したほか、新譜ジャズのレコード・コンサートを毎月開くなど、芸術文化のコミュニティーとして活況を呈した。
本書は、モンタンが主催・企画した展覧会やプロジェクトをはじめ、直接、間接的に関わった作品や資料で構成する。単なる企画展の図録の枠にとどまらず、関係者が語るモンタンの思い出や当時の盛岡の街の雰囲気、店に集う人々の様子が、豊富な写真資料とともに語られる。
中でも異色は、66(昭和41)年開催の「モンタンに行ってワーゲンをもらおう!!」と題したイベント。車を景品とした一大キャンペーンは、一店舗の催しを越えた、市民を巻き込む一大ムーブメントの様相を呈し、当時の興奮が立ち上がってくるようだ。
小瀬川考案の、名物カクテル「どんカク」やスープスパゲティ「ア・ラ・モンタン」も紹介している。(三)
◇
杜陵高速印刷出版部019(651)2110=2750円。