『幻想の都 鎌倉 都市としての歴史をたどる』高橋慎一朗著(光文社新書)

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幻想の都 鎌倉

『幻想の都 鎌倉』

著者
高橋慎一朗 [著]
出版社
光文社
ジャンル
歴史・地理/日本歴史
ISBN
9784334046071
発売日
2022/05/18
価格
902円(税込)

書籍情報:openBD

『幻想の都 鎌倉 都市としての歴史をたどる』高橋慎一朗著(光文社新書) 902円

[レビュアー] 牧野邦昭(経済学者・慶応大教授)

 今年のNHK大河ドラマの舞台であり観光地として有名な鎌倉。「古都」と呼ばれる割にあまり知られていない鎌倉の現代までの歴史を本書は教えてくれる。

 鎌倉幕府が滅んだ後も室町幕府が鎌倉府を置き、戦国大名が鶴岡八幡宮を保護するなど、鎌倉の主こそが関東の支配者だという意識は残り続ける。江戸時代に入ると鎌倉は江ノ島や金沢八景とともに巡れる江戸近郊の観光地となる。また曽我兄弟の仇(かたき)討ちなどの歴史物語や、中世に時期を設定した忠臣蔵などが人気を博し、人々はそこに登場する鎌倉の場所を「聖地」として訪れるようになったという。人々が古都という幻想を重ねる場所になった鎌倉は、明治以降の交通網の整備もあり、観光地や高級住宅地として発展していく。

 鎌倉はこのように一種の幻想が作った古都であるため、実際の史跡や建造物が少なく、世界遺産には落選してしまった。しかし人々が鎌倉に抱く古都としての思いは環境や文化の保護にも役立っている。ドラマやアニメの舞台を訪れるコンテンツツーリズムの古い成功例として鎌倉を改めて観光するのも面白いだろう。

読売新聞
2022年9月23日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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