『自民党の魔力 権力と執念のキメラ』蔵前勝久著(朝日新書)

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自民党の魔力

『自民党の魔力』

著者
蔵前勝久 [著]
出版社
朝日新聞出版
ジャンル
社会科学/政治-含む国防軍事
ISBN
9784022951786
発売日
2022/07/13
価格
935円(税込)

書籍情報:openBD

『自民党の魔力 権力と執念のキメラ』蔵前勝久著(朝日新書)

[レビュアー] 井上正也(政治学者・慶応大教授)

 平成の政治改革から約四半世紀が経過したが、二大政党制は定着せず、「一強多弱」と呼ばれる状況が続く。なぜ自民党は強いのか。本書は丹念な取材を基に、地方組織や地域を分析することで自民党の力の源泉を明らかにしている。

 自民党組織は永田町に限ればトップダウンの印象が強い。だが、地方組織では多様性が尊重され、ボトムアップの側面が色濃く残る。思想や政策によってまとまるのではなく、自民党はその土地土地での「強者をのみ込むブラックホール」なのだという。

 地方との関係から見ると古参政治家たちの戦略も浮き彫りとなる。選挙強者の引き抜きを徹底し、小派閥を拡大させた二階俊博。選挙区の陳情を自らに一元化させた「岩手モデル」を全国に拡大しようとした民主党時代の小沢一郎。そこにはかつて利権配分のシステムを全国に張り巡らせた田中角栄の影が見え隠れする。

 政策や党首の「顔」が重視される時代でも、地域の小さな課題に取り組み、選挙区の人々とのつながりを大切にする政治家はやはり強い。政治の原点を考えさせてくれる好著である。

読売新聞
2022年9月23日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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