『男の覚悟』
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格闘家・山崎秀晃がパフォーマンスを最大化するために実践している「2つの習慣」
[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)
よくも悪くも人にやさしい現代においては、「誰かと競う必要はない」というような発言を目にする機会も少なくないかもしれません。
「しかし現実問題として、競争のない世界などあるのだろうか?」という疑問を投げかけているのは、『男の覚悟 自分を誇れる生き方』(山崎秀晃 著、すばる舎)の著者。
なぜなら「負けたくない」と思うことこそ、あなたが本気で闘っている証であり、その思いを追求することが、勝つための原動力になるからです。
この本を手にしてくれた人のなかには、私のファンでいてくれる人もいるでしょうし、「格闘技にまったく興味がない」という人もいるでしょう。
あなたがどんな人であれ、あなたと私には、ひとつの共通点があります。
「闘っている」ということです。(「PROLOGUE」より)
格闘家である著者のように相手を殴ったり蹴ったりする「闘い」ではなかったとしても、この社会で生きている以上、大多数の人は、なにかを手に入れようと必死に奮闘しているはず。
そのため、そんな人たちに向けて著者は「闘わなくても生きていける世の中だからこそ、あえて勝ちを取りにいかないか?」といいたいのだそうです。
つまり本書には、著者が格闘技を通じて身につけてきたそんな価値観や姿勢が反映されているわけです。きょうは第4章「パフォーマンスを最大化する5つの条件」のなかから、2つを抜き出してみたいと思います。
ベストな自分を更新する
著者の生活は、身体を動かすことが中心になっているそうです。以下のように、食事と睡眠以外の時間は、ほぼ身体を動かしているというのです。
普段は7時くらいに起き、朝食を済ませたあと、8時くらいから子どもと遊んだり、経営するジムに向かいます。
その後、ランチを済ませたら、所属ジムに行き、夕方5時くらいまでトレーニングをします。
仕事や会食などが入る場合は午前中からトレーニングをしますが、空手教室などがある場合は、それ以外の時間をトレーニングに充てており、夜に自宅で食事をしたあとに、1時間ほど走るという生活を送っています。
(143ページより)
「疲れたな」と思うときも、ジムに行けば自然とエネルギーが湧いてきて、他の選手ががんばっている姿を見ると「自分も負けていられない」と気合いが入るそう。10年ほど続けているというそんな生活こそが、仕事でもあり、ストレス解消法でもあり、モチベーションを維持するためのルーティンでもあるというのです。
その際、意識しているのは「日々、限界突破」という意識を持って取り組むこと。
ただやるべきメニューをこなすだけでは、本気になれません。昨日の自分を超えることこそ、モチベーションが生まれ、成長につながるのです。(144ページより)
そんな著者はいつも、「きょうは充実した1日だったなぁ」と思いながら1日を終わらせたいと思っているのだそうです。なぜならそれが、「誇れる自分」につながるから。
いつも強い自分でいるためには、なにに対しても惰性で取り組んではいけないということ。現状維持ではダメで、むしろプロのアスリートとしてそれは当然のこと。そうした意識を持ち続けることこそが、自分自身の成長を促すのでしょう。
しかしそれはアスリートだけに限った話ではなく、ビジネスパーソンにも当てはまる考え方でもあるのではないでしょうか?(142ページより)
メリハリをつける勇気を持つ
アスリートにとって身体を動かすことは日常ですが、とはいえ休息日も必要。「よい休息がとれなければ、よいパフォーマンスは生まれない」ということを理解しているからこそ、著者も休むべきときには休んでいるようです。
大切なのは、がんばるときは死ぬ気でがんばること。そして休むときはしっかり休むことです。(146ページより)
疲れやケガを無視して無理にがんばったとしても、パフォーマンスは上がらなくて当然。むしろパフォーマンスを上げるためには「ほどよいメリハリ」が必要であり、それがあるからこそ、さらにがんばることができるというわけです。
なお、「いまの自分を変えたい」というような向上心を持っている人は、なにかに影響され、生活をガラッと変えようとする傾向があると著者は指摘しています。もちろん、自分を変えるために新たな行動をすること自体は意味のあることでしょう。しかし、それが一過性のものであったら意味はありません。
なんにせよ、行動を「続ける」ことが大切だということ。
「何をしても三日坊主で終わってしまうんです」「最初だけは張り切ってやるのだが、続かない」などと悩む人は多いと思います。
しかし、そういう人は、新しいことに挑戦するフットワークの軽さがあるとも言えます。
それが続かないのは、やり方を間違えているだけなのです。
「やろう」と思う気力は、自信を持つべき長所です。(148ページより)
たとえば「自分を鍛えるために毎日、筋トレをしましょう」といわれたとき、本当に続けられる人は1割にすぎないかもしれません。そして当然ながら、いちばんすごいのは、そういう「続けられる人」になるでしょう。
しかし、「挑戦しても三日坊主で終わった人」も、必要以上に自己否定する必要はないと著者はいいます。挑戦すること自体が素晴らしい経験であり、その経験こそが、自分が変わるためのトリガーになりうるから。
最初から100%の力でやらず、60%に抑えてやってみる。
そこでなれてきたら、少しずつ70、80と上げていくのです。(143ページより)
最初からフルスロットルでがんばろうとせず、少し抑えたやり方に変えてみることがポイントのようです。(146ページより)
本書のタイトルにある「覚悟」とは、“困難を予想し、心構えをすること”。迷いながらも戦い続けている著者は、自身の生き様を知ってもらうことにより、強く生きるための「覚悟」を決めてほしいのだと記しています。格闘技に関心があるかどうかにかかわらず、参考にできることは少なくなさそうです。
Source: すばる舎