『チェコに学ぶ「作る」の魔力』
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<東北の本棚>創造に向かう人と思考
[レビュアー] 河北新報
愛するチェコの「作る力」に引かれる著者が、その歴史や文化を学び、人々と出会うことを通じて、人はなぜ作るのか、作るとは何かという根源的な問いの答えを探る。絵はんこ作家の著者が手掛けた絵はんこやイラストなどが、表紙も含めて随所に登場するが、そのかわいらしい印象を越えて、内容は奥深い。
最初に登場する「作る人」からして、規模感が想像を上回る。チェコで訪ねたワインショップの地下には全長300メートルの通路が広がる。男性が1人で掘り、ワイン貯蔵庫などがあり、からくり装置まで仕込んでいる。千葉県に住むチェコ人男性は、山の斜面に建つ家の多くを自分で工事し、おもちゃも自分で作る方が「買うより楽しい」と語る。
郊外の別宅「ハタ」での暮らしなどチェコのライフスタイルも紹介しつつ、著者は多様な「作る」に迫る。中でもユダヤ人強制収容所で、雑誌の発行を続けた少年たちの姿には胸を突かれ、創作が人に与える力について考えさせられる。
「体や手に宿った『作る力』は、そう簡単に他者に奪われない」。著者のメッセージは力強く、作る経験を重ねたい気持ちになった。
著者は米国生まれ、東京育ち。2021年から岩手県紫波町で暮らす。(ま)
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かもがわ出版075(432)2868=1760円。