外国に分割統治されたり東西に分断されたり 「占領された日本」を読み比べる

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  • 九段下駅 或いはナインス・ステップ・ステーション
  • 抵抗都市
  • あ・じゃ・ぱ!(上)
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書籍情報:openBD

外国に分割統治されたり東西に分断されたり 「占領された日本」を読み比べる

[レビュアー] 大森望(翻訳家・評論家)

 翻訳小説らしくないメインタイトルと坂野公一の大胆なカバーデザイン(装画はQ-TA)が目を惹く『九段下駅』。中身はというと、アメリカと中国に分割統治される2033年の東京を描く警察小説。全10話の連続ドラマに見立て、4人の著者が各2~3話ずつ執筆。4人の訳者がそれぞれ著者ひとりずつを担当している。

 2031年、日本に南海地震が発生。混乱に乗じて侵攻した北朝鮮に日本が報復爆撃したのを口実に、中国が九州を武力制圧し、東京の西半分を占拠。東京の東半分はアメリカの管理下にある―というのが2033年現在の状況。

 主人公の是枝都は、九段下(東側)にある警視庁本部刑事部の警部補。米国大使館の要請で送り込まれてきた平和維持軍のエマ・ヒガシ中尉と組むことを命じられ、女性同士で捜査にあたる。神田駅顔面破壊刺殺事件、重役墜落死密室事件……。殺人や誘拐などの大事件が(刑事ドラマ的に)毎回発生するものの、各話が短いこともあり、ろくろく推理する間も捜査会議を開く間もなく、真相は勝手に解明されてしまう。

 とはいえ、海外作家が描き出す(お台場にユニコーンガンダムが立つ現在の東京にそのまま重ねられた)“分割統治下の東京”の細部は異国情緒満点。全体を貫くストーリーは途中で終わっているので、シーズン2の邦訳に期待したい。

 対する佐々木譲『抵抗都市』(集英社文庫)は、日露戦争敗戦後、事実上ロシア統治下に置かれた(大正時代の)東京を舞台にした改変歴史警察小説。警視庁刑事課特務巡査の新堂は、西神田署のベテラン刑事とコンビを組み、殺人事件の捜査にあたる。オーソドックスな警察小説のスタイルで事件を追ううち、やがて意外な背景が明らかに……。東京の変貌ぶりを『九段下駅』と読み比べてほしい。

 最後の矢作俊彦『あ・じゃ・ぱん』(上下、角川文庫)は、第二次世界大戦末期にソ連が北海道に侵攻、東西に分断された日本を描く、大胆かつコミカルな改変歴史冒険小説。実在の人物がまったく別の役割でばんばん登場するのが楽しい。

新潮社 週刊新潮
2022年10月13日号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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