きっかけは善意 だが着地点はガーシーの不作為の暴露本

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春馬くんとの”未来の雑談” ~三浦春馬の勉強ノート~

『春馬くんとの”未来の雑談” ~三浦春馬の勉強ノート~』

著者
斉藤 かおる [著]
出版社
講談社
ジャンル
歴史・地理/伝記
ISBN
9784065286272
発売日
2022/09/16
価格
1,540円(税込)

書籍情報:openBD

きっかけは善意 だが着地点はガーシーの不作為の暴露本

[レビュアー] 今井舞(コラムニスト)

 2020年に急逝した三浦春馬の31歳の誕生日の頃に、本書を書こうと思い立ったという著者は、彼のボイストレーナーを務めた女性。ミュージカル、映画、ドラマ、歌手と、多岐にわたる彼の活動を7年にわたり裏で支えたという。本書では、まじめで頑固で繊細な、在りし日の彼の素顔がつまびらかにされている。

 本来なら、ファン垂涎の一冊のはずなのだが。彼のプライベートについて詳細に触れている部分があり、かなり物議を呼んでいる。

 ボイストレーニングの一環で、生活を指導することもあり、次第に三浦の私生活についても知るようになっていく著者。「時々彼女が泊まりに来る」等の、信頼の上に成り立っていたであろう、赤裸々な彼との会話をダイレクトに明かしている。確執が報じられている彼の母についても「飼っていた犬を母に預けたら、その後返してくれなかった」「付き合っている恋人の顔が、母に似ていた」など、随分と踏み込んだ記載が散見。更には「愛し合っていても、絶対に結ばれないタイミングと相性があることを春馬くんは知りました」と、全て知っていたかのように総括。だが文脈をよく読むと、バラエティ番組での彼のトークで知り得た話がソースだったりするのである。うーむ。

 著者のトレーニングのメソッドに関しては、著述を見る限り、解剖学なども駆使するかなり卓抜したもの。その描写と、それをスポンジのように吸収する三浦の成長譚の部分は、著者にしか書けない話であり、こういう逸話だけなら喜ばれたと思うのだが。主に会話を情報源にして、彼のデリケートな部分をうっとり語る著者。カメラ、バイク等、広く知られる三浦の趣味は全て自分の手ほどきから始まったと言わんばかりの記述などを見るにつけ、「あの素晴らしい三浦春馬が信頼を寄せるほど、ひとかどの人物である私」を喧伝したいという自我が香り立つ。

 ガーシーの暴露は悪意に基づいたものだったが、たとえ「こんなに素敵な彼を知ってもらいたい」という善意からであっても、泉下の三浦春馬にしてみれば、これもまた暴露本であることに変わりはない。

新潮社 週刊新潮
2022年10月13日号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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