『散歩道の図鑑 あした出会えるきのこ100』新井文彦著、保坂健太郎監修(山と溪谷社)
[レビュアー] 宮部みゆき(作家)
神奈川県や山梨県の山間部で、猛毒のあるカエンタケが発生している。埼玉県の森林公園では、その強い毒性故に「殺しの天使」の異名を持つドクツルタケが確認された。どちらも今年の夏のニュースだ。きのこは食材として身近なものだが、命取りになる危険なものも、意外と近くに存在している。
町なかの散歩や公園ウオーキングで、高原や山道を行くハイキングで、木々の根元や下草や落ち葉の陰に「あ、きのこだ!」と発見したら、本書の出番だ。かばんや上着のポケットに収まるサイズで、百種類のきのこを網羅している。オールカラーだから、実物を見つけたときすぐ比べることができて実用的。ページを繰ると不思議で楽しい。たとえば上の写真は通称「死者の指」のマメザヤタケだ。真っ黒に見えるのはモノクロ紙面だからではない。もともとこの色、この形のきのこなのだ。群生を見てみたいような、怖すぎて見たくないような。