『衡平な大学入試を求めて (原題)The Conditions for Admission カリフォルニア大学とアファーマティブ・アクション』ジョン・A・ダグラス著(九州大学出版会)

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衡平な大学入試を求めて

『衡平な大学入試を求めて』

著者
ジョン・A. ダグラス [著]/木村 拓也 [監修、編集]
出版社
九州大学出版会
ジャンル
社会科学/教育
ISBN
9784798503356
発売日
2022/07/23
価格
3,300円(税込)

書籍情報:openBD

『衡平な大学入試を求めて (原題)The Conditions for Admission カリフォルニア大学とアファーマティブ・アクション』ジョン・A・ダグラス著(九州大学出版会)

[レビュアー] 森本あんり(神学者・東京女子大学長)

多様性重視 改革の歴史

 アメリカの大学入試が急速に変わりつつある。よく知られたSATやACTなどの全米標準テストは、多くの大学で任意ないし不要とされるようになった。それらのテストでは高校までの学習成果を適切に測ることができず、大学入学後の成績との相関も予測できないことが明らかになってきたからである。

 本書は、こうした改革で先頭に立つカリフォルニア大学(UC)の自己検証の歴史である。一八七三年創立のバークレー校を皮切りに、現在一〇キャンパスと二一万人の学生を抱えるまでになった米国最大の大学システムは、公立大学の「社会契約」を追求する。私立の名門大学が人種や宗教を選考基準に用いてきたのと対照的に、能力さえあれば誰にでも門戸を開く、という使命である。

 大学は、州内の市民の多様性を反映させなければならない。だから単なる「平等」ではなく「衡平」を求めるアファーマティブ・アクションが必要なのである。少数者を優遇する同アクションは白人への逆差別だ、とする議論も知られているが、それが争われた裁判が今から四〇年以上も前だったことに驚かされる。

 従来の標準テストがさらに問題なのは、それが大学本来の目標である多様性を実現できていないことである。ここには、大学がどのような志願者を集め、結果としてどのような社会的機能を果たしているかについての真剣な問い直しがある。

 フランスの政治思想家トクヴィルによれば、アメリカは革命なしに民主主義を達成した国である。誰もが生まれながらに平等で、多様な高等教育の機会が提供されている。その結果、二〇世紀には世界でもっとも生産性の高い労働力を擁する国となった。だが二一世紀の今、高等教育への就学率と学位取得率は停滞し、人種間の格差は拡大している。

 大学は何のために存在するのか。学術面で高い成果を挙げることか。公共善を実現することか。日本の大学と入試改革の混迷ぶりを見ていると、「大学の社会契約」などという言葉は眩(まぶ)しすぎるほどである。木村拓也監訳。

読売新聞
2022年10月7日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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