最強リーダーを目指すなら、メンタルヘルスも守る「セルフ・パペット」技術を実践せよ

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最強リーダーを目指すなら、メンタルヘルスも守る「セルフ・パペット」技術を実践せよ

[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)

私は現在、スピーチコンサルタントとして経営者や政治家など各界のエグゼクティブやリーダーの方々にトレーニングを行っています。

クライアントの方々には、私がお手伝いしていることは必要以上に口外しないようお勧めしています。なぜなら、「生まれながら才能がある」ふりをすることが、周囲の期待に応えることだからです。

ひいては、リーダーとしての話す力を増大させることにつながります。(「はじめに」より)

最強リーダーの「話す力」 誰から見てもリーダーらしく見える「話し方」の秘密』(矢野 香 著、ディスカヴァー・トゥエンティワン)の著者はこう主張しています。「生まれながら才能があるふりをする」などといわれると少なからず戸惑ってしまいますが、そこが重要なポイントなのだとか。

本来の自分とは違う話し方をするということは、「リーダーの自分」と「本当の自分」とを分けて考えるということ。それは、どんな局面であっても長くリーダーであり続けるための策でもあるというのです。

そんな難しそうな、面倒そうなことができるだろうか。そう不安を感じる方は「本当の自分」が「リーダーの自分」を操り人形のように操る様子をイメージしてみてください。

私はこれをセルフ・パペット(自分の操り人形)と呼んでいます。心理学では「自己呈示」と呼ばれる概念で、本書の重要な要素です。(「はじめに」より)

まずはあらかじめ「理想のリーダー像」をセルフ・パペットとして設定。そののち本書で紹介されているスキルを使ってセルフ・パペットを操るうち、本当のリーダーになっていけるのだそう。

第1章「リーダーの話し方は『これだけ』やればいい」のなかから、2「なりたいリーダー像をセルフ・パペットに設定する」に注目してみましょう。実際にセルフ・パペットをつくるための手順を解説したパートです。

ステップ1:なりたいリーダーのイメージを言語化する

まず大切なのは、“自分がなりたいリーダー像”をイメージし、それを言語化すること。たとえば、「信頼できるリーダー」「頼りになるリーダー」「相談しやすいリーダー」「堂々としたリーダー」などなど。現状の自分を表すものではなく、“なりたい姿”や“目指すイメージ”をことばにするわけです。

憧れているリーダーやロールモデルがいるのであれば、その人を表現することばを考えてみるのもひとつの方法。その場合、自分と切り離して客観的に考えることができるため、ことばが浮かびやすくなるはず。

どうしてもイメージが固まらない場合は、自分のことをリーダーに任命した人に意見を聞いてみるべき。自分のリーダーとしての魅力はどんなところにあるのか、どこに今後の可能性を感じるのか(たとえば「若さ」なのか、「落ち着き」なのか、「暖かさ」なのか、「怖さ」なのか、「情熱」なのか、「誠実さ」なのか、など)、客観的な意見を尋ねてみるということです。(40ページより)

ステップ2:なりたいリーダーのイメージに相応しい立ち振る舞いをする

なりたいリーダー像が決まったら、次はそのイメージに相応しい話し方や立ち振る舞いによってセルフ・パペットを操る段階。

ロールプレイングゲームの初期設定で自分がプレイするキャラクターを決めたり、メタバースでアバターを設定したりするのと同じイメージだそうです。(42ページより)

ステップ3:一度設定したら変えない

セルフ・パペットは、一度設定したら変えるべからず。イメージをコロコロと変えることなく、常に一定であるべきだということです。さらに重要なのは、最低でも10か月は同じイメージで続けること。

なぜなら10か月は、相手がこちらの印象を確定させる期間の目安だから。そんなに続けていたら飽きてしまうかもしれませんが、一定期間続けることで、やっと他人に自分のイメージが定着しはじめるというのです。(42ページより)

セルフ・パペットはモノマネから始まる

上記のステップ2(なりたいリーダーのイメージに相応しい立ち振る舞いをする)のもっとも基本的なスキルは「モノマネ」。

つまり、なりたいリーダーのイメージに近い人を真似るということです。

真似るポイントは、大きく2つ。

何を話すか(言語情報:セリフ、言葉づかい等)、どのように話すか(非言語情報:見た目、ジェスチャー、服装等)です。

この2つをまずは徹底的に分析し、真似る。そして、自分なりにアレンジしながら回数を重ねます。(43〜44ページより)

これは、語学学習で手本を聴きながら行う「シャドーイング」にも似ているといいます。(43ページより)

セルフ・パペットはリーダーのメンタルも守る

セルフ・パペットには、自分のメンタルを守るというメリットも。つまりはセルフ・パペットとして自分と切り離しておくことによって、問題が生じたときに自分自身を守ってくれるということです。

ネット時代、SNS時代の今日、表に立つリーダーは、他者や世間からの批判やいわれなき誹謗中傷を受ける可能性が、より高まっています。

実際、政治家やタレント、メディアに出る有識者やアナウンサーなどの立場の方々がこのセルフ・パペットを活用したトレーニングを行った結果、鬱的症状や眠れないために飲んでいた薬をやめることができたとおっしゃっていました。(45ページより)

そこまで深刻なケースでなかったとしても、日々のワークライフバランスも、セルフ・パペットを使えば切り替えが簡単になるそうです。

たとえば常に仕事中の自分を引きずっていたとしたら、疲弊してしまっても無理はありません。しかし、セルフ・パペットを自覚的にオン・オフできるようになれば、それはメンタルヘルスを守るための有効な手段になるわけです。(44ページより)

時間や感情と同じように、「表現」もまた、自分自身が意識的に責任を持ってマネジメントすべき対象なのだと著者はいいます。だとすれば本書を活用し、意図した「表現」を安定的に再現できるようになりたいものです。

Source: ディスカヴァー・トゥエンティワン

メディアジーン lifehacker
2022年10月13日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

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