『日本中世の民衆世界』
書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます
『日本中世の民衆世界 西京神人の千年』三枝暁子著
[レビュアー] 産経新聞社
戦乱が相次いだ中世には、商工業者もときに武力を行使した。本書で取り上げられている西京神人(にしのきょうじにん)もそうした人々だ。
中世の京都で麹(こうじ)業を営み、その独占権を巡り武装して北野天満宮に立て籠もった。文安元(1444)年の「文安の麹騒動」では、室町幕府の管領の命を受けた軍勢と数時間にわたる合戦となった。
著者が西京神人に注目したのは、その共同体が現在も存続しているからだ。毎年秋に神人家によって神前に供えられる兜(かぶと)形の赤飯は、幕府の軍勢に加わった歴史を伝えているという。神人家に長槍が残っているなど千年の都の奥深さを感じる。(岩波新書・968円)