<東北の本棚>英語教育に偉大な足跡
[レビュアー] 河北新報
幕末の仙台に生まれ、その一生を英語教育と辞書の編さんにささげた斎藤秀三郎(ひでさぶろう)。1915年刊行の「熟語本位 英和中辞典」は100年の時を経て新版が発刊されるなど、日本の英語教育に大きな足跡を残した人物だ。
斎藤は28年、4600ページにも及ぶ「斎藤和英大辞典」を完成させた。例文には俳句や漢詩、自身の生い立ちや身の回りの出来事までも採用した。いわき市出身の著者は、斎藤の著作を基に、類いまれな英語学者の半生を振り返り、熟語(idiom)を重視した斎藤英語を紹介している。
仙台藩士の厳格な父(every inch an old samurai)は、藩内では珍しく英語に通じていた。幼少から英語を授けられた秀三郎は、私塾の開設や旧制一高(現在の東京大)教授などを経て、30歳の時、東京・神田に正則英語学校(現在の正則学園高)を設立した。
発音と文法重視のこなれた訳文が特徴の「正則」式を掲げた斎藤。教室には立錐(りっすい)の余地がない(There is no standing room)ほど学生が集まった。63歳で没するまで、辞書など生涯200冊以上を著す偉業を果たした(He has left his mark upon his country)。(浅)
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