いつも上司の顔色を気にしている人が、なにかと得する「図太い部下」になるヒント

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いつも上司の顔色を気にしている人が、なにかと得する「図太い部下」になるヒント

[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)

他人の目は、なにかと気になってしまうもの。インターネット、SNS、その他さまざまな技術が発達し、常にお互いに監視し合っているような状況になっている現代においてはなおさら。他人の目が気になって生きづらさを感じてしまうとしても、無理はないわけです。

そこで参考にしたいのが、きょうご紹介する『最新研究でわかった ”他人の目”を気にせず動ける人の考え方』(堀田秀吾 著、秀和システム)。

本書は、そういった「他人の目が気になって、自由に動きにくい…」という方々に向けて、世界中の超一流研究機関の研究者たちによって行われてきた実証的な研究をエビデンスとして紹介しながら、より「自由な自分で生きる」ことを実現するための方法を、一緒に探っていくことを目的としたものです。(「はじめに」より)

著者はもともと、言語学、心理学、脳科学、法学などさまざまな分野の知見を融合しつつ、コミュニケーションという切り口を通じて人間の心のメカニズムを解明する研究をしてきたという研究者。つまりここでは、そうしたバックグラウンドを反映しながら、あらゆる学術分野の知見に基づく解決策を提案しているのです。

そんな本書のなかから、6章「上司と部下の『気にする・しない』」に注目してみたいと思います。

「図太い部下」になるヒント

いつの時代も上司と部下の関係性は難しいものですが、それは部下のタイプによっても変わってくるものです。上司の顔色を伺う部下もいれば、その一方には、上を上と思わないような図太い部下もいるわけですから。

文化的に「気遣い」が推奨される日本においては、ほとんどの人が前者になるかもしれません。つまり、「気遣いの人」が多いということです。

とはいえもちろん、図太い人がダメだというわけではありません。むしろ空気を読まず、上司の目など無視して勢いよく突き進んでいける「図太い人」のほうが、ビジネスでは成功したりするものだと著者も述べています。

逆に「気遣いの人は周囲に合わせようとするため、常識から外れた突飛なことはできそうにないイメージがあります。事実、南メソジスト大学のキング氏らの研究でも、「『調和性』の高い人は『創造性』と負の相関がある、つまりクリエイティブな課題では成績が振るわなかった」と報告されているのだとか。

「気にする」人が「図太い人間になりたい」と願うなら、なによりもまず環境を変えることです。無理せず図太くなれる環境を探すということです。(中略)

自分を変えるのではなく、環境を変えるのです。今いる環境が、あなたを「人の顔色をうかがう人」にしているのかもしれません。(161〜162ページより)

もちろん、自分が慣れ親しんだ環境を離れるのは簡単ではなく、不安も生まれることでしょう。また、やってみてだめだった場合、少なからず後悔することになる可能性もあります。しかし、それでも一歩踏み出してみる勇気が、自分自身を変えるのだというのです。

コーネル大学の心理学者ギロビッチとメドヴェックは、「後悔」に関する5種類の調査を行いました。その結果分かったのは、人は短期的には「やってしまった」ことに対する後悔をよく覚えているが、長期的には「やらなかった」ことへの後悔を強く覚えているということ。(162ページより)

そればかりか、行動しなかったことに対する後悔は、時間の経過とともに高まる傾向があるようです。よく、「やらない後悔より、やる後悔」と耳にすることがありますが、あながち間違ってはいないということ。不安や不満を抱えたときは、「考える」よりも「動く」ほうが後悔は少なくて済みそうです。(160ページより)

リモートワークでは不向きな作業とは

コロナ禍の影響でリモートワークが浸透し、「直接会わなくてもできることがあるんだな」と実感した方も多いことでしょう。しかしそんななか、「これはリモートでは難しい」ということも明らかになりつつあります。

基本的に、ことばによる「情報伝達」を目的としたコミュニケーションであれば、リモート環境でもさほど問題はないはずです。しかし「関係構築」や「複雑な問題解決」に関する作業に、リモートは不向きかもしれないわけです。

人間は、ことば以外の情報(非言語情報)によってもやりとりしているもの。むしろ、ことばよりも表情や声のトーン、身振り手振りなどを介した非言語的コミュニケーションのほうが情報量が豊かだともいえます。しかし非言語情報は、リモート環境でやりとりできるものではありません。さらにリモート環境では、心の距離(心的距離)も離れてしまう可能性も

また、リモート環境が「複雑な問題解決=クリエイティブな作業」に向かないのは、「多対多」のコミュニケーションが難しいから。

フロリダ大学のショーが、こういったコミュニケーションの形態に関して先行研究を概観する研究を行っています。

多対多の形態は、①「課題の多角的な検討に優れている」、②「複雑な課題の解決に向いている」、③「参加者の士気・満足度が高い」そうです。(182ページより)

リモート環境が得意とするのは、1対1、あるいは1対多の関係における情報伝達。これは1人の話し手が聞き手に対して一方的に話すだけ、また聞き手はただ聞くだけで成立するものです。

ところが複雑な問題解決において望ましいのは、多対多の関係性。端的にいえば、クリエイティブな作業には、“ガチャガチャしたコミュニケーション”が効果的

複数人がそれぞれ違う相手と会話をしていて、その内容もバラバラ。とはいえ、みんなの耳になんとなくそれぞれの会話が飛び込んでくる。その結果、お互いがお互いを刺激することになり、その延長線上で「いま、ひらめいたんだけど」などと思いもよらないアイデアが出てきたりするーー。

理想的なのは、そうした環境だということです。しかし、リモート環境でそれは望めないわけです。

そんなところからもわかるように、すべてのコミュニケーションがリモートで成立するわけではないのです。なにごとも一長一短。リモートワークの使い方も、これからさらに洗練させていく必要があるのだと著者は述べています。たしかに、そのとおりかもしれません。(181ページより)

このように、自身の仕事や職場環境で活用できそうなトピックスが本書には多数収録されています。他者との関係性を改善するべく、まずピンときたものを試してみる価値はありそうです。

Source: 秀和システム

メディアジーン lifehacker
2022年10月20日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

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