台湾の受験事情をリアルに描いたベストセラー『子供はあなたの所有物じゃない』 訳者が語った反響のすごさ

エッセイ

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子供はあなたの所有物じゃない

『子供はあなたの所有物じゃない』

著者
呉暁楽 [著]/木内貴子 [訳]
出版社
光文社
ジャンル
文学/日本文学、小説・物語
ISBN
9784334914936
発売日
2022/10/19
価格
1,980円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

家庭教師は見た! 台湾のリアルな受験事情「子供はあなたの所有物じゃない」訳者新刊エッセイ 木内貴子

[レビュアー] 木内貴子(翻訳家)

 実体験に基づく台湾の受験事情をリアルに描いた小説『子供はあなたの所有物じゃない』(光文社)が刊行。ドラマ化もされ、台湾で6.6万部のベストセラーになった本作について、翻訳を手掛けた木内貴子さんが読みどころと台湾での反響を語った。

 ***

 人口もエネルギー資源も少ない台湾は、人材育成が国力増強につながることから、国家を挙げて教育に力を入れています。その流れで、受験戦争はどんどんと熾烈(しれつ)になり、受験期の子どもたちは勉強に明け暮れる毎日です。

『子どもはあなたの所有物じゃない』の著者・呉暁楽(ごぎようらく)氏は、台湾の大学の最高峰である台湾大学を卒業したエリートであると同時に、熾烈な受験戦争の勝者。在学中から家庭教師をしていた呉氏のもとには、我が子も勝者にと熱望する保護者からの依頼が次々と舞い込んできました。

 本書は、そんな呉氏が家庭教師として受け持った生徒の家庭で経験した九つの物語。様々なケースが登場する中で、最もページを割いて書かれた物語は、「第八の家 モンスターたちの集まる場所」。保護者は、我が子の学歴だけを重視し、子どもの意思に反することばかりを強要した結果、歪んだ親子関係は修復不可能の領域まで達する、というお話です。

「受験」とは、正しく向き合わなければ、親子関係を壊す魔物となります。では、正しい向き合い方とは何なのか。その答えは本書にあります。

 本書は、台湾で6・6万部ほど売れたベストセラー。人口約2400万人の台湾で6・6万冊売れたということは、人口約1億2500万人の日本に換算すると、34万部以上のベストセラーということになります。

 つまり、すごく売れたということ。台湾での初版は2014年11月で、2018年にはドラマ化もされ話題となり、2019年6月に重版。しかし、同時に反論も多かったそうです。主な反論は、一介の家庭教師に保護者の気持ちが分かるはずがない、といった保護者側からのもの。著者は、こうした意見を謙虚に受け止めつつも、本書のタイトルに込めた思いは変わらないといいます。受験という魔物をどう退治すればいいのか。ぜひ本書からその答えを見つけて下さい。

光文社 小説宝石
2022年11月号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

光文社

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