『殺意』
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【気になる!】文庫『殺意 サスペンス小説集』井上靖著
[レビュアー] 産経新聞社
『天平の甍(いらか)』『敦煌(とんこう)』『おろしや国酔夢譚(たん)』など数々の歴史小説で知られる著者が、昭和20年代に発表したサスペンス小説を収録。文庫オリジナル。
東京で酒場に勤め、ヒモにまとわりつかれた女が、男に殺意を抱くきっかけを描いた表題作。戦争ですれ違った男女の不可思議な関係と、その結末が胸を打つ「傍観者」。解説の米澤穂信が「後の偉大な歴史小説家の第一歩」と記す「ある偽作家の生涯」など9編。
半世紀以上前の作品にして古さを感じさせず、読み応えがある。記憶と、そこから紡がれる情に操られる人々の心理に引き込まれる。(中公文庫・946円)