『きりえや偽本シネマ大全』
書籍情報:openBD
『きりえや偽本シネマ大全 名作映画パロディの世界』高木亮著(現代書館)
[レビュアー] 宮部みゆき(作家)
今年も残すところ二ヵ月あまり。慌ただしくなる時季に、ただただ愉快な本をご紹介したい。著者はきりえ画家で、「着せれば別の本に見えてしまう」パロディブックカバー「偽本」をまとめた単行本はこれが二冊目。名作文学のパロディ集だった前著に続き、本書は映画のパロディだ。映画通の方にも、これからたくさん映画を観(み)ようという方にも、それぞれのベクトルで楽しんでもらえるだろう。
一瞥(いちべつ)で吹き出してしまう『ウエストサイド素通り』に『羊たちの親睦』、『猿の学生』『椿さん十浪』『男たちのバンカー』。タイトルも笑えるし、ちゃんとついている帯がまた可笑(おか)しさを増幅する。初版特典のポストカード、私がもらったのは『アンバター』で、帯の惹句(じゃっく)は「ナゴヤおそるべし」でした。原作映画のリストについている紹介文が簡にして要で、お役立ちなのも嬉(うれ)しい。