『江戸狛犬図鑑』荒勝俊著(さくら舎)

レビュー

3
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

江戸狛犬図鑑

『江戸狛犬図鑑』

著者
荒勝俊 [著]
出版社
さくら舎
ジャンル
芸術・生活/絵画・彫刻
ISBN
9784865813593
発売日
2022/09/08
価格
2,640円(税込)

書籍情報:openBD

『江戸狛犬図鑑』荒勝俊著(さくら舎)

[レビュアー] 梅内美華子(歌人)

 こんなにさまざまな狛犬(こまいぬ)がいたとは驚きだ。東京の240寺社を収録した本書をめくってゆくと一つとして同じものがないと気づく。毛並みはウェーブ、巻き毛、おかっぱ頭などがある。渦巻きの毛をいくつも盛っている体躯(たいく)は優雅で力強い。かっと開いた口に並ぶ三角の尖(とが)った歯は怪獣のようでゆるキャラの先祖かと思う。狛犬の子は親の背に乗ったり、腹の下にもぐって乳を飲んだりしている。市谷亀岡(いちがやかめがおか)八幡宮の狛犬もキャラが立っている像の一つで衝撃を受けた。漫画家が描いたものを彫刻したのかと思うくらい濃い顔立ち。江戸時代にこんな奇抜な発想をする石工がいたのだ。寺社を守護する狛犬は石匠の技が刻まれ、地域の人々の願いがこめられたものなのである。

 狛犬の起源は霊獣の獅子にさかのぼる。古代オリエントからシルクロード、中国を経て伝わり、日本では左右非対称の思想をとりこんで阿吽(あうん)の一対という独自の形になった。

 身近にある「石の芸術」の狛犬。本書の観察ポイントを参考に近所から巡ってみよう。

読売新聞
2022年11月11日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

  • このエントリーをはてなブックマークに追加