『戦争日記 鉛筆1本で描いたウクライナのある家族の日々』オリガ・グレベンニク著(河出書房新社)

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『戦争日記 鉛筆1本で描いたウクライナのある家族の日々』オリガ・グレベンニク著(河出書房新社)

[レビュアー] 読売新聞

 著者はウクライナ・ハルキウに住んでいた絵本作家。9歳の息子や4歳の娘、夫らと暮らしながら、「カラフルな色彩と幸せ」にあふれる絵を描いていた。そんな著者の生活は2月24日に一変する。

 ロシアによる侵略が始まった日、「万が一、死んでしまっても身元が分かるように」と、著者は子どもたちの腕に名前と生年月日、連絡先を書く。理由を聞く娘に、心配をさせたくない著者はとっさにこう答える。「遊びをしているの」「『戦争』っていう遊びよ」。国外に脱出するまでの日々を著者は鉛筆でスケッチし続けた。

 どんなひどい環境にも人は“慣れる”。生き抜く上で必要な側面もあるだろうが、これはいただけない。侵略開始直後、私たちはその惨状に驚いたが、あれから8か月余り。ひどいニュースにも、ひょっとすると、この種の本にも、慣れつつあるのではないか。そんな私たちの目を覚まさせてくれる一冊。奈倉有里ロシア語監修。渡辺麻土香、チョン・ソウン訳。(十)

読売新聞
2022年11月18日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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