明治10年の西南戦争で、明治政府軍が西郷軍に苦戦を強いられた一因は、九州の地理的情報の不足だった。国内の地図さえ未整備な状況では、富国強兵も殖産興業もおぼつかない。以後、政府は本格的な日本地図作製に着手し、その中心となったのが陸軍参謀本部陸地測量部だった。
日本初の近代的地図となった伊能図から、明治の兵制整備に伴うドイツ式測量地図の導入、そして戦後の米国式への転換まで。陸地測量部の後身にあたる国土地理院の元技官が、先輩技術者たちへの共感を込めて描く地図の近代史。(角川ソフィア文庫・1144円)

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2022年11月20日 掲載
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