<東北の本棚>多様性尊重へ続く奮闘

レビュー

1
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

ハイヒールを履かない女たち

『ハイヒールを履かない女たち』

著者
あぶみ あさき [著]
出版社
かもがわ出版
ジャンル
社会科学/社会
ISBN
9784780312386
発売日
2022/09/24
価格
1,980円(税込)

書籍情報:openBD

<東北の本棚>多様性尊重へ続く奮闘

[レビュアー] 河北新報

 各国の男女平等度を分析した世界経済フォーラムの「ジェンダー・ギャップ指数」で世界3位のノルウェー。100位以下の日本には理想郷とも映るが、現地では今も課題が多く、闘い続ける人々がいることを教えてくれる一冊だ。著者は秋田市出身でノルウェー在住の北欧ジャーナリスト・写真家。市民運動や政治などの4章構成で、いずれも現場に根差したリポートだ。必ずしも指数に反映されない声の数々は、真の平等社会を問う貴重なヒントになりそうだ。

 ノルウェー社会の影を強く感じさせられたのは「#MeToo」運動のうねりの中、多くの業界でセクハラが告発された実態の報告。ジェンダー平等を進めた政党の幹部のセクハラ問題も表面化、若者らが声を上げ行動を起こしたという。「出した膿(うみ)は大きいが、平等に向けて進む道のりにはまだまだ課題がありそうだ」と著者。国や地域を超えた問題の根深さを痛感した。

 意外な格差にも驚かされた。本書によると、ノルウェーのフルタイム平均月収(2021年)は女性より男性が高く差も大きい。労働市場でジェンダー平等を進めようとした結果、女性は公的機関、男性は民間企業という職域分離が拡大。民間は給料は高いが競争が激しく、女性は育児と両立しやすい公的機関を選ぶ傾向が強まり、平等政策の問題となっているという。

 課題を指摘しつつも、本書は、平等を目指して人々が動いてきたノルウェー社会の歩みや根幹も伝える。「国際女性デー」や多様な性への理解を求める「プライド・ウィーク」などが盛り上がる様子は象徴的だ。政党の青年部などを通じた、若者の活発な政治参加も興味深い。

 本書のタイトルは、自立して生きるノルウェーの女性たちが、動きやすいスニーカーを好んで履く姿にちなむ。著者撮影の写真も多数掲載され、現地の空気感が伝わってくる。(春)
   ◇
 かもがわ出版075(432)2868=1980円。

河北新報
2022年11月27日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

河北新報社

  • このエントリーをはてなブックマークに追加