『街並探険ー山形・村山と最上の周辺から』
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<東北の本棚>路上観察の成果 一冊に
[レビュアー] 河北新報
路上を観察し、多くの人が存在を意識していなかった物や無用の長物などに目を向け、景観の妙を味わう「路上観察学」。1980年代後半に前衛美術家で作家の赤瀬川原平さん(故人)や文筆家、美術家らが始めたユニークな活動だ。その考え方や実践を踏まえ、村山市に住む著者が、山形県の村山、最上地域をカメラ片手に歩いて「調査」した成果が詰まっている。
著者の友人が個人的に発行するミニコミに、2017年から約3年間連載した約80件の紹介文をまとめた。
天童市では「ありがとさま~」「またござっしゃい」という看板付きの自動販売機を発見。設置した人の心の温かさとユーモアが感じられる。
「おねがい あぶないので おちないで下さい」という険しい崖の近くにある看板、鶴岡市出身の作家藤沢周平さん(故人)の全集を抱えたサンタクロースの等身大の置物…。目を凝らして街を歩けば、面白い物や景観がたくさんあることに気付かされ、好奇心が刺激される。
掲載した物件については、詳細な場所はあえて記さず、静かに見守られ、朽ちていくのも命運としている。
著者は1959年村山市生まれ。大東文化大を卒業後、高校教師を33年間務めた。(沼)
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無明舎出版018(832)5680=1430円。