『息をつめて』
書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます
泣かせまくりの『息をつめて』『息をつめて』著者新刊エッセイ 桂望実
[レビュアー] 桂望実(作家)
『県庁の星』『嫌な女』『恋愛検定』などの作者・桂望実による小説『息をつめて』が刊行。書評家や編集者泣かせといわれるネタバレ厳禁の本作について、作者本人が自作への想いを語りながら、作品の紹介に挑戦した。
***
ネタバレさせずに小説を語るのは難しい。特にネタと構成が絡み合っている場合は、言えないことが多過ぎて、難度が高くなる。
以前上梓した小説『諦めない女』の時もそうだった。その難しさから書評家泣かせと言われた。同じ理由で、帯の文句や小説の宣伝文を、考えなくてはいけない編集者も泣かせた。
新刊『息をつめて』は『諦めない女』と同等、いや、それ以上に書けることが少ない。間違いなく編集者は大泣きしたはず。
そして今、新刊に纏(まつ)わるエッセイを書くことになった私も、泣きそうになっている。因果応報だ。
涙を堪えながら書けるところだけを拾って、どんな小説かをお知らせすると―主人公は五十一歳の麻里。麻里は訳ありといった風情の女。この麻里の物語。
あっ、終わっちゃった。
ネタバレしないようにすると、こんな薄い情報しか出せなくて申し訳ない。
情報は薄いが、小説自体はかなり濃く、ビターな味わいになっている。主人公の心の変化を丁寧に描いたつもりだが、果たして読者はなにを感じるだろうか。
主人公が最後に下す決断には、賛否両論が出るであろうことは覚悟している。最後に主人公を嫌いになってしまう人もいるだろう。仕方がない。だが彼女の決断を理解し、また声援を送る人もいると信じている。
今年は作家デビューして二十年目だった。その節目の年に、この主人公と出会えたことは、運命だったような気がしている。
詳細は語れないが運命の作品なので、読んで欲しいという私は、なんて自分勝手なのだろうと思うが、それでもやはりお願いしたい。『息をつめて』をぜひ。