妖怪が大好きで、専門に研究する大島清昭が語る 身近な中国妖怪の存在

エッセイ

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地羊鬼の孤独

『地羊鬼の孤独』

著者
大島清昭 [著]
出版社
光文社
ジャンル
文学/日本文学、小説・物語
ISBN
9784334914974
発売日
2022/11/24
価格
1,980円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

魅惑の中国妖怪『地羊鬼の孤独』著者新刊エッセイ 大島清昭

[レビュアー] 大島清昭(作家、妖怪研究家)

 妖怪が大好きです。これまで基本的に日本の妖怪を専門に研究を続けてきましたが、妖怪研究の国際化への興味から、ここ数年は中国や台湾の妖怪にも関心があります。

 思えば、私が最初に中国妖怪と出会ったのは、水木しげる先生原作『ゲゲゲの鬼太郎』の劇場版アニメ『ゲゲゲの鬼太郎 最強妖怪軍団!日本上陸!!』でした。この作品には、天狗、妖犬、山しよう、黒怪物、くしゃみの精、角端獣、画皮など、個性豊かな中国妖怪たちが跳梁跋扈(ちょうりょうばっこ)し、鬼太郎たちと激しいバトルを繰り広げます。子供ながらに日本妖怪とは異なる魅力を持つ中国妖怪に胸を躍らせたことを覚えています。

 あまり妖怪に詳しくなくても、『西遊記』の孫悟空、猪八戒、沙悟浄、牛魔王、金角大王、銀角大王などは、ご存じの方も多いのではないでしょうか。最近では高橋留美子(たかはしるみこ)先生の『犬夜叉』の続編であるアニメ『半妖の夜叉姫』に、四凶―即ち、窮奇、檮(とう)こつ、渾沌、饕餮(とうてつ)や女かといった中国妖怪をモデルにしたキャラクターが登場しました。意識して見てみると、中国妖怪は案外身近に姿を見せていたりするものです。

 さて、『地羊鬼(ちようき)の孤独』の地羊鬼も、明の時代の『雲南百夷篇(うんなんひゃくいへん)』や『七修類稿(しちしゅうるいこう)』に記載された中国妖怪です。地羊鬼は、人間が気付かない内に、その内臓や手足を木や土に変えてしまいます。そのため、被害者が亡くなってから、腹を開けて初めて、地羊鬼に襲われたことに気付くそうです。

 余談ですが、本作を執筆中、あるものが突然グルグル回るという不可思議な体験をしました。折角なので、その怪異については作中に紛れ込ませてあります。

 と、うっかり妖怪のことばかり書いてしまいましたが、『地羊鬼の孤独』は連続猟奇殺人事件や密室の謎を描いたミステリです!

光文社 小説宝石
2022年12月号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

光文社

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