『リデザイン・ワーク 新しい働き方 (原題)Redesigning Work』リンダ・グラットン著(東洋経済新報社)

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『リデザイン・ワーク 新しい働き方 (原題)Redesigning Work』リンダ・グラットン著(東洋経済新報社)

[レビュアー] 佐藤義雄(住友生命保険特別顧問)

仕事場・時間 会社ごとに

 人生100年時代をどう生きるかでベストセラーとなった『LIFE SHIFT』の共著者が、働き方の現在と未来を語った一冊。近年、AIによる自動化やデジタル化、長寿化・人手不足等の構造的要因、そして家族のあり方の多様化や人々の仕事への意識の変化を背景に、働き方が変わらざるを得ない状況がグローバルに起きていたが、必ずしも全ての企業が十分に対応できていたわけではないだろう。

 だが新型コロナウイルス感染症パンデミックがこの状況を一変させた。企業に「働き方のリデザイン」を考え実践させる千載一遇の好機が訪れ、多くの企業で仕事の場所と時間が多様化し、働き方改革が一気に進んだ。従業員のデジタル活用能力が向上し、また在宅勤務で時間を有効活用して、地域コミュニティへの参画が進むという好ましい変化も起きているという。一方で、目標の共有や仕事の連携、暗黙知の伝達が難しくなるなどのデメリットも生じている。また働き手それぞれの仕事の性質や経験年数、家庭の状況等に応じ働き方へのニーズも多様化しており、それぞれに応じた改革はどうあるべきかも重要な課題だと指摘する。

 日本企業を含め、これらに取り組む多くの企業の幹部と著者との対話を通じて得られた改革の様々な事例やアイデアが本書では紹介される。しかしそれらを参考としつつも画一的なアプローチではなく、自社の価値観とパーパスに基づき「自社ならでは」のモデルを構築することが重要だという。機動的で柔軟な働き方で、やり甲斐(がい)と生産性と充実感を高めることが組織の成長と働き手のウェルビーイングにつながる。そのために「言葉から行動へ」跳躍する手引きとして本書を読んでほしいと著者は訴える。

 企業経営者やマネジャーに向けて書かれた一冊であるが、会議運営の工夫やオンとオフの切り替え方など働き方の様々なヒントも多く、全ての働く人におすすめしたい。池村千秋訳。

読売新聞
2022年12月2日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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