『学び直し大全』
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学び直しは、なぜ挫折するのか?習慣化と建設的休憩で「大人の学び」を最高のエンタメにする方法
[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)
社会に出て多忙な毎日を送っていると、いつしか「学び」からは遠ざかってしまいがち。
それどころか、自分でも気がつかないうちにテレビやSNSなど“受け身のエンターテインメント”で息抜きするだけの消極的な日常に埋没していたりするかもしれません。
しかし、『学び直し大全』(堀 宏史 著、大学教育出版)の著者は次のようにいうのです。
「学ぶ」ことは自らが作り出すことのできる最高のコンテンツです。
自分が本当の興味のあることを、気が済むまで学び続ける。これ以上の楽しいことはありません。
学ぶことは最高のエンターテイメントなのです。(「はじめに なぜ今『学び直し』が必要なのか」より)
しかも学びに没頭すれば、「ゾーン」に入ることも可能。アスリートのように、驚異的に集中した状態を経験できるということです。そして学びに集中したあとは、日ごろの悩みなどから解放されてスッキリした気分になれるのだとか。著者はそれを、学ぶことで得られるマインドフルネス=ラーニングフルネスと呼んでいます。
そんなことからもわかるように、あらためてゼロから「学ぶ」プロセスを体験し、新たな刺激を受けることには多くのメリットがあるということ。そこで本書では、“人生100年時代”といわれる時代の渦中で「楽しく学び続けられる方法」を体系的にまとめているのです。
とはいえ気になるのは、「時間のない日常のなかでどう学びを続けていくか」ということかもしれません。そこで第5章「どうすれば学び続けられるのか?」のなかから、いくつかのポイントを抜き出してみたいと思います。
学びを習慣化させよう
学びは短期集中ではなく、長期的に継続させることが重要。そうすれば、より深い理解に到達することができるからです。だからこそ、“学習の習慣化”が重要なポイントになるそう。
いうまでもなく習慣化とは、歯磨きなどがそうであるように、意識しなくても毎日繰り返し行うことができる動作のこと。同じ行動を反復すれば脳が行動パターンを学ぶため、意志の力を使うことなく、無理なく繰り返すことができるようになるわけです。(188ページより)
学びを習慣化する2つのメリット
習慣化には2つのメリットがあるといいます。
まず1つ目は、勉強する時間をきちんと確保できるということ。
習慣化できれば毎日必ず勉強に取り組めるようになるので、少しずつ、しかし確実に勉強時間を積み重ねていくことができるわけです。
2つ目は、勉強を楽しめるということ。
当然のことながら、「これから勉強しなくては…」「きょうは面倒くさいな」というような思いはストレスにつながっていくものです。
けれど習慣化できれば、自分の意志の力に負荷をかけることなく、スムーズに勉強を進めることが可能。そのため、ストレスも減っていくのです。(188ページより)
習慣化を実現する「決めごと」のつくり方
習慣化を実現するためには、自分で“決めごと”をしっかりと設定していくことが大切だと著者はいいます。
まず、いつどこで勉強するか「時間・場所」を決めましょう。
例えば、「毎朝8時の時報が鳴ったら、机に座って勉強を始める」と決めてしまうことです。
あとはその決めごとにしたがって、毎日続けることに徹するだけです。
スマホのアラームを毎日セットして、「アラーム音を聞いたら必ず机に座る」という決めごとでもOKです。(189ページより)
最初のころ面倒に感じたとしても、1週間も経てば無理なくスムーズに勉強に入れるようになるそうです。(189ページより)
学ぶことは自分との対話
本来、なにかを学ぶということは自分自身との対話だと著者は述べています。たしかに自己学習の場合は、受験勉強のように他者と点数をくらべる必要もありません。
「マイペースを保てるか」が勉強を続けられるかどうかのポイントです。学ぶのがツラいな、楽しくないなと感じたら、ちょっとペースを落として休んでもいいのです。(190ページより)
たとえば、あらかじめスケジュール表に「この日はなにもしない」と書いておけば、その休みに向けてモチベーションも高まっていくはず。(190ページより)
学びの「チートデイ」をつくる
毎日きちんと学習を習慣化させていたとしても、“なにもやりたくない日”はいつか必ず訪れるもの。したがって、そんな日は「チートデイ」としてしまうことを著者はすすめています。
チート(cheat)とは「ズルをする」という意味で、チートデイとはダイエットで「ズルをして何でも食べてよい日」とされています。
あまりストイックにダイエットをやりすぎると、ダイエット自体がイヤになって止めてしまう人が出てきます。
これを防ぐために、「たまにはズルして、好きなものを食べてもいいんだよ」というルールをつくることによって、結果的に長くダイエットを続けることができるのです。(190〜191ページより)
勉強についても同じこと。「勉強をしない」と決めたチートデイには、勉強のかわりに自分の好きなことを思い切り楽しめばいいのです。(190ページより)
学ぶことはマラソン
著者いわく、なにかを学ぶということは、マラソンのようなもの。フルスピードで走り続ければ、いつかどこかで疲れてしまうわけです。しかし途中で“建設的休憩”をとれば、走り続けることができるはず。だからこそ、チートデイもまた重要だということです。(191ページより)
変化の激しい時代の渦中にありながら自身が変化しないということは、退化していることと同じ。だからこそ、常に自分をアップデートさせるべく学び続け、進化し続けることが必要。著者のこうした考え方に基づく本書を参考にしながら、あらためて学びなおしてみれば、視野はさらに広がるかもしれません。
Source: 大学教育出版