元駐ドイツ大使と元陸将がそれぞれの知見を統合したウクライナ情勢の解説書だ。ただ、専門家特有の難解な表現は少ない。ロシアの侵略意図、情報戦などを含むハイブリッド戦争の実相、中国や北朝鮮の脅威にさらされる日本の備えは十分かなどを多角的に分析している。
「プーチン大統領が自らの政権維持のために仕掛けた」と断言しつつ、ウクライナで軍事展開をしない北大西洋条約機構(NATO)に「ロシアの核の脅しに屈した」と核抑止の現状にも丁寧に触れている。安全保障とは何か、同盟とは何かを考える上で示唆に富む一冊だ。(東信堂・1980円)
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2022年12月11日 掲載
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