「『十二国記』画集《第二集》青陽の曲」山田章博著(新潮社)
[レビュアー] 読売新聞
12の国がハスの花びらのように並ぶ、古代中国風の異世界を舞台にした、小野不由美さんの大作ファンタジー「十二国記」シリーズ。熱烈なファンも多い同シリーズが、スタートから30年を超えたことを記念して、このほど画集が刊行された。
第2集は、新潮文庫から刊行された《完全版》の、表紙のイラストや挿絵全点など、山田章博さんの作品計144点が収められている。
画集に寄せた文章で小野さんは、こうつづっている。<(『月の影 影の海』の)この表紙によって、わたしの中に「何か」がセットされました。続く『風の海 迷宮の岸』を書いたとき、その「何か」が羅針盤のように作品の目指すべき方向を示していた>
小野さんの文章が山田さんの創造力を引き出し、山田さんのイラストが小野さんに刺激を与える。この奇跡の共同作業の恩恵にあずかれる幸せを、一読者としてしみじみと感じずにはいられない。(十)