<東北の本棚>垣間見る行政の裏面史

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非出世系県庁マンのブルース

『非出世系県庁マンのブルース』

著者
高 啓 [著]
出版社
高安書房
ジャンル
社会科学/社会
ISBN
9784991274305
発売日
2022/10/01
価格
1,980円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

<東北の本棚>垣間見る行政の裏面史

[レビュアー] 河北新報

 山形県職員OBの著者が、行政マンとして歩んだ38年間の悲喜こもごもをつづった回顧録。一つ一つのエピソードにドラマがあり、表立って名前が出ない幾多の人の献身と情熱に私たちの暮らしが支えられていることを実感する。

 土木や商工観光、健康福祉、農林水産など多岐にわたる分野で汗を流した著者。入庁した1982年はバブル全盛期で「土建政治」が幅を利かせていた頃だ。ページを繰ると旧態依然とした行政の一端を垣間見ることができる。

 例えば道路維持課では旧建設省の人間を温泉旅館で接待する官官接待が日常のように行われ、カラ出張も当たり前だった。補助金獲得のため中央の役人に神経をすり減らす描写は、現在とは隔世の感がある。

 山形の特産品である紅花のPRに奔走する姿も興味深い。2000年代初頭、安価な海外産に押され需要が低迷したことから、生産流通課にいた著者は予算をやりくりして認証シールなどを作り、紅花商人さながらに売り込みをかけた。公僕としての矜持(きょうじ)を伝える自分史だが、県政の裏面史としても面白い。

 1957年湯沢市生まれ、山形市在住。山形県詩人会事務局長、日本現代詩人会会員。詩集「二十歳できみと出会ったら」など。(長)
   ◇
 高安書房023(645)4032=1980円。

河北新報
2022年12月18日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

河北新報社

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