この世界の闇と人間の業を描き、海外でも高く評価される作家の長編小説。
先の大戦時、悪魔的な音色を奏でて旧日本軍兵士を鼓舞し、ある作戦を劇的な成功に導いたとされる美しいトランペット。主人公の男性ジャーナリストはその伝説の楽器を手に入れたことから、謎の男たちに追われる身となる…。
ドイツや日本を舞台にしたサスペンスタッチの逃亡劇に、ベトナム人女性が背負ってきた祖国の苦難や長崎での潜伏キリシタン迫害といった史実が見事に絡み合う。国籍などの差異を超えた融和の可能性へと目を向けさせる、静かな「抵抗の物語」だ。(幻冬舎文庫・957円)
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2022年12月18日 掲載
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