言葉のセンスは語彙力×状況を把握する力で発揮できる。「話す」アウトプット力の身につけ方

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教養のある人がしている、言葉選びの作法

『教養のある人がしている、言葉選びの作法』

著者
齋藤孝 [著]
出版社
ぱる出版
ジャンル
社会科学/社会科学総記
ISBN
9784827213577
発売日
2022/12/08
価格
1,540円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

言葉のセンスは語彙力×状況を把握する力で発揮できる。「話す」アウトプット力の身につけ方

[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)

誰もがSNSで発信できるようになった現代は、ほぼすべての人が表現者となっている時代。したがって、自分の発した言葉に責任をもたなければならない。それは、すべての人が言葉に対して責任を問われる時代になったということ。

教養のある人がしている、言葉選びの作法』(齋藤 孝 著、ぱる出版)の著者はそう指摘しています。

そこで重要になってくるのが、「言葉のセレクト」。

言葉遣いというものは、言葉をセレクトするセンスにかかっています。

大切なのは、この、「言葉を選ぶセンス」というものに気づくこと。誰かの言葉のセンスの素晴らしさに気づき、それを見極められるかどうかがポイントです。(「はじめに」より)

なお、言葉のセンスを突き詰めて考えてみると、まず大切なのが「語彙力」語彙力があれば、言葉をセレクトする幅が広がるわけです。そして、もうひとつが「状況を把握する力」、すなわち状況に合わせて言葉を使い分ける力。場面や人間関係にも留意しつつ、状況に応じて言葉を使い分けるということです。

豊かな語彙と、こうした使い分けがビシッとハマったときに「言葉のセンスがいいね」「キレがいいね」と認められ、気の利いた会話が生まれます。そうなれば、当然、自分も気持ちよく話すことができるようになるのです。(「はじめに」より)

そこで、言葉のセンスを磨くために書かれたのが本書だということ。きょうは第5章「センスが光る発信例――文学作品・「話す」発信・書く「発信」・就活ビジネスシーン」のなかから「『話す』アウトプット力の身に付け方」に注目してみたいと思います。

日常のおしゃべりで訓練する

著者はまずここで、「インプットしたこと、学んだことを、誰かに話すこと」を習慣づけることを提案しています。

人は誰かに話すとき、話す内容を理解してもらえるよう自然に整理するもの。そこでアウトプットの最良の訓練方法として、仲のいい友人との「おしゃべり」をすすめているのです。

私自身、学生時代は仲のいい友人と、1日5時間以上はおしゃべりしていたものです。

大学にも一緒に通っていたのですが、午前中はカフェなどに行って勉強しながら話す。夜は夜で深夜喫茶や居酒屋で話す。

話す内容は、大学の授業や読んだ本、映画のことなど、さまざまなジャンルにわたります。(188〜189ページより)

そうしたおしゃべりが、「話すこと」のいい練習になっていたのだというのです。たしかに常におしゃべりをしていれば、言葉が出てこなくていいよどむようなことがなくなり、「話題が思いつかない」ということもなくなってくるでしょう。

それに言葉がスーッとセレクトできるようになれば、卓球のラリーのように会話が気持ちよく進むはず。おしゃべりを意識する機会は少ないかもしれませんが、これは習慣としてぜひとも取り入れたいところです。(188ページより)

気持ちいい相づち、的確な質問が会話の成果を生む

プライベートの会話でも会議でも、自分ひとりでアウトプットしていたのではコミュニケーションなど成り立ちません。大切なのは、相手の話に耳を傾け、気持ちのいい相づちを通じて相手の話にリアクションすること。そうすれば、おのずと話は広がっていくわけです。

心がけたいのが「いや」「でも」「しかし」といったネガティブな言葉を発しないことです。

使うなら「いいですね」「たしかに」「なるほど、それでどうなります?」「よくわかります」「そうですよね」といった、気持ちのいい相づちが有効です。

「やはり大事なのは◯◯なのですね」などと、相手の話のキーワードを交えた相づちをすると、相手は自分を理解してくれたと思い、さらに話が展開し、実りある会話になります。(189〜190ページより)

的確な質問も、聞く側からのアウトプットだといえるそう。

ありきたりな質問ではなく、相手がおもしろがる質問、ほかの人も聞きたいだろうと思う質問ができればベスト。その結果、思いもよらない答えを得ることができれば、それが新たなインプットになるわけです。(189ページより)

1つの話題を15秒、30秒、1分で話す

気の置けない友人とのプライベートの会話なら、ダラダラ話しても構いませんが、大学や会社、取引先で話す際には、与えられた時間内にコンパクトにまとめて話せる力が求められます。そのために時間を区切って話す訓練がオススメです。(190ページより)

著者が大学の授業でよく実践しているのが、実際にストップウォッチで時間を測る方法。

何回か繰り返すうちに、15秒、30秒、1分と、ひとつの話題でそれぞれどのくらいのことが話せるかを実感できるようになるそうです。

実際にやってみると、多くの学生が「1分は長い」と感じたようです。そこで1分を「15秒×4」と捉えて話すように指導した結果、学生たちは多くの情報を整理して1分で発信できるようになったのだといいます。(190ページより)

営業トークに生きる自己紹介

自己紹介にも、意識しておくべきポイントがあるようです。

自己紹介では自分という人間に興味を持ってもらう仕掛けを考えましょう。そこで私が推奨しているのは、自分という人間を「自分の好きなモノ・コト」で表現することです。

「私は今、落語にハマっています」「私の趣味は温泉巡りです」などということを、就活や名刺交換の際の自己紹介で添えれば、印象に残ります。もしそこに興味を抱いてくれれば、「どの落語が好み?」とか「今、オススメの温泉は?」などと会話が広がり、和やかなムードで面接や商談が始まることでしょう。(191ページより)

つまりは自分という人間に共感してもらうために、「好きなモノ・コト」でアピールすべきだということです。

言葉のセンスは決して生まれつきのものではなく、さまざまな磨き方によって習得することが可能だといいます。著者のそんな考え方に基づく本書を参考にしながら、センスを磨き上げてみてはいかがでしょうか?

Source: ぱる出版

メディアジーン lifehacker
2022年12月16日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

メディアジーン

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