『現代アートはすごい』
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現代アートがわかれば芸術がわかる
[レビュアー] 林操(コラムニスト)
『現代アートはすごい』――普通なら素通り確定の駄目タイトルなのに即買いしたのは著者名ゆえ。この安っぽすぎる看板、あの布施英利ならきっと逆張りに違いないと踏んだのよ。
そういう読みは大当たり。一見安直な題名は、ルネ・マグリットがパイプの絵に記した「これはパイプではない」と同じくらい強力な仕掛けで、中身は20世紀以降の芸術についての見事な入門書でした。現代アートを、▼始祖はマルセル・デュシャン、▼モダンとポップがあり、▼建築や文芸も含まれ……と明確に位置づけ、その何がどうすごいのかを作家別・テーマ別に、ゲージツ臭くない平易な言葉で語ってくれる。個人的には、第二次大戦後のモダンアートについちゃ、カート・ヴォネガットの『青ひげ』でわかったつもりだとして、それ以外の時代・分野については、この新書でようやく肚に落ちたところ、多にして大。
いや、現代アートなんて成金の群がるイカモノだとお嘆きの貴兄貴姉が多いことは重々承知です。が、ジャスパー・ジョーンズやアンディ・ウォーホル、あるいはパブロ・ピカソが独自の流儀を獲得するまでの来歴や、ダミアン・ハーストや今井俊満の作風が一見わかりやすそうな方向へ変節した背景などを聞かされてると、ハッと見えてくるのよ、現代アートも間違いなく芸術であることが。
その結果、真にイカモノな自称アートの見分けがつくようになるのもまた、この本のご利益のひとつ。