『戦国十二刻 女人阿修羅』
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結婚生活と戦国女性の奥深さ『戦国十二刻女人阿修羅』著者新刊エッセイ 木下昌輝
[レビュアー] 木下昌輝(作家)
戦国時代の女性の一日を切り取った短編集『戦国十二刻 女人阿修羅』(光文社)を刊行した木下昌輝さんが自作について語った。
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私にとって異性、つまり女性との共同生活――平たくいうと結婚生活は大変、有意義なものです。
妻が料理を作れば「今日の酢豚は肉が柔らかいね」とコメントし、妻の外出時、「今日の装いは冬らしくていいね。特に新しく買ったコートとパンツのコーディネートが……」と言いつつ、目を皿のようにして微細な変化も逃さぬようになりました。さらに妻が「このピアスかわいい」などとテレビを観てコメントしたら、何気ない風を装ってスマホでメモしておきます。勿論、妻は優しいので好みにあわない贈り物でも怒りません。ちょっと針の筵(むしろ)かなと思う程度の言動が多くなる程度です。さらに毎日、起床時と就寝時、いかに妻が美しく気立がいいかを客観的かつ公平に言葉で描写することも忘れません。無論のこと毎日ちがう文言を駆使します。同じフレーズを二日連続で使用すれば、なぜか部屋の体感温度が氷点下以下になります。結婚がいかに人を――有体にいえば男性を――成長させるかわかります。ああ、そういえば、いつも「今日の服はどう」とファッションチェックを強要されるので、ある時、「今日の昌輝(まさき)の着ている服のオシャレポイントは」と逆質問したら、「はあぁ」と女性とは思えぬほど低い声で恫喝(どうかつ)されました。このように妻は常に優しい言動で私の至らない点も教えてくれます。
さて本題に入ります。『戦国十二刻女人阿修羅』は戦国時代の女性の一日を切り取った短編集です。結婚生活で女性の素晴らしさを嫌というほど理解したのに、なぜかとても業の深い女性ばかり登場します(そうじゃない女性も登場します)。とはいえ、小説の世界はフィクション。殺伐(さつばつ)とした戦国時代にはこんな女性がいてもおかしくありません(しつこいですが、そうじゃない女性も登場します)。決して現実の誰かがモデルではありません。
とりあえず妻には出版のことは内緒にしとこうと思います。
※このエッセイはフィクションです。